ふりー!

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「あのぼく、お店に行って貰ってきますから待っててくださいね?」

待って行かないでニトリくん!心の声も虚しくニトリくんは行ってしまった…。取り残された私と凛。私はしゃがみ込み散らばった食材やらを拾い集める。凛の顔を見ることはできそうにない。しかし、

「相変わらず抜けてんな」

顔を覗き込まれはっとして見上げるとそこには呆れた顔。再会してから基本その顔しか見てない気がする。そして思いのほか近い距離、成長し少し大人っぽくなったその顔に思わず顔が熱くなった。慌ててぴょんっと後ろに距離を取り両手で顔を押さえた。

『気づかれてたかぁ…』
「そりゃあんだけ派手に音立てたら目立つだろ」



「袋貰ってきました〜!これに入れましょう!」



戻ってきたニトリくん。本当に親切な子だ。この気まずい空気がいい感じに緩和されていく気がする。もうここは私一人で何とかなりそうだし、お礼を言って打ち切ろうとしたのだが、凛のまさかの一言に私は拾い上げた人参を再び落としてしまう。

「似鳥、お前はもう帰れ。ここは俺がやっとく」
「ええ?!ぼくも手伝いますよ!」
「お前明日テストって言ってたろ?」
『あのぉ…私一人でなんとかしますよ…』

と言ってみると凛に睨まれた。口を挟むなって顔だ。もうこれ以上は何も言わないでおこう。そして結局似鳥くんにお礼を言い、彼は何度も凛に頭を下げて帰って行ってしまった。再び何とも言えない空気にいたたまれない。そもそも凛はなぜ残ってくれたのだろう。


*
結局なにもわからないまま落ちたものを袋に詰める。凛は無言だったが手伝ってくれ、そのおかげであっという間に終わった。

『…ありがとね』
「ん、お前これどうした」
『これおばあちゃん家から貰ってきたんだ。お魚が入ってるんだよ』
「…だからここにいたのか」
『まさか鮫柄と最寄駅が同じとは思わなかったからびっくりしたよ』

そしてクーラーボックスを持ち上げようと手を伸ばすも、凛がそれを持ち上げたことによって手は行き場をなくした。ちらっと顔を見てみると「行くぞ」とぶっきらぼうに言う。これは駅まで送ってくれるってことかなぁ?とりあえず頷いて代わりにスーパーの袋を持ち上げた。




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