風華月炎

□冬空の誓い。
1ページ/3ページ



キミを守ると決めたあの日。
 あの日に比べて、オレは強くなれただろうか。
  キミの心を守れるほどに――……。



冬空の誓い。【坂城啓一郎×遠野 静】



「啓一郎…。私、クリスマスツリーが見たい」

クリスマスが近づくある冬の日の夜、静の放った言葉に俺は驚いてしまった。
静は寒さが苦手なので、冬は必要最低限以上外出しない。今までだって、クリスマスは家で過ごしてきた。
それを、まだ当日ではないが静は自ら「見たい」と言うのだ。よっぽど見たいのだろう。
「…よし。じゃ、行くか」
そう言って俺の左腕にまわっていた静の腕をとって立ち上がらせると、静は嬉しそうな顔でそれに答えてくれた。



「うわぁ…」
「すげーな」
静が見たいと言ったツリーは、学校の帰り道とは反対側の場所にあった。
とても大きいそのツリーの周りには、数々のデコレーションやイルミネーション。先端で光る星は、まるで本物の星のように輝いていた。
「見れてよかったな、静」
「うん!ありがとう、啓一郎…」
俺たちは暫くの間、イルミネーションに魅せられたようにその場所から離れることができなかった。



帰り道、俺は疑問に思っていたことを静に聞いてみた。
「何で、クリスマスツリー見に行きかったんだ?」
俺の隣を歩いていた静は歩くことを止め、俺の質問に答えた。
「あのね…あのツリー、恋人同士で見ると幸せになれるって聞いたから、啓一郎と見たいって思ったの。それで、イヴとクリスマスだとやっぱり人がいっぱいいるから平日がいいかなって…」
成る程、そういうことか…。     
俺は今のままでも幸せだけど、やっぱあの心配は消えないんだな。
「そっか…サンキュー、静。」
俺のそんな素っ気無い返事でも、静は笑ってくれた。
―この笑顔、ちゃんと守っていけるよう、今以上に強くなろう。
いつか来るかもしれない、あの日が来ても大丈夫でいられるように。

そう誓った、この冬の夜―。


END

あとがき&設定→


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ