風華月炎

□確想。
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突然、確かめたくなるんだ。
 キミに限ってそんな筈はないけれど、ボクは恐いんだ。
  キミとボクの想いが離れてしまうことが――……。



確想。【勝浦刹那×瀬碕砂夏】

「なぁ、ちぃ」
「何?刹那」

ある日の放課後。
夕日が窓から差し込む生徒会室で仕事をしていた刹那は、備え付けのソファーに座る砂夏に声をかけた。
「もし、また俺が留学するって言ったら……どうする?」
「……行っちゃうの?」
刹那の言葉に砂夏は不安そうな表情を浮かべる。
唯えさえ、小・中学校時代は砂夏は東京へ、中学校時代は刹那が留学と離れ離れの生活を送っていた二人─。
高校になって、ようやく同じ学校に通うことができたのである。
そして、もう今年で高校も卒業だという年に、刹那は再び留学を考えているようだ。
正直、砂夏には面白くない。
――また自分は置いていかれるのだろうか?
そんな不安ばかりが砂夏の頭を支配してゆく。

「……ちぃ?」
中々答えを返さない砂夏に不安を持った刹那の表情には、いつもの余裕はなかった。
「ヤだ……」
ようやく口を開いた砂夏は、唯、一言答えた。

「置いていかれるのは絶対に嫌。刹那が留学するなら、私も一緒に行く…」
すると、刹那はいつの間に移動したのか、突然隣にいた砂夏を抱きしめた。
「ちよっ?!せつ…」
突然の刹那の行動に、砂夏は顔を自身の鮮やかな紅い髪のように赤らめた。
「…ごめん。嘘だ」
「なっ…?!」
刹那の突然の告白に、砂夏は驚きを隠せない。
「留学なんて行かない。…行くとしたらお前も連れてく。唯、ちぃの本当の気持ちが知りたかっただけだ」
「っ…もう!ビックリさせないでよ!!刹那のバカ。本気で心配したじゃない…」
嘘と言われ、安心した砂夏は思わず憎まれ口をたたく。
砂夏の紫苑の瞳には、うっすらと涙が滲んでいるようにも見える。
「ごめんな…。でも、ちぃの気持ちがわかったから充分だ」
「…本当に、本当に行かないよね?」
留学話は嘘だとわかってもまだ心配なのか、砂夏は不安な表情を浮かべている。
「ああ、行かないよ。……でも、もし行くことになったら…」

――お前も一緒に連れていくよ。
   新婚旅行気分でね――。


END


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