風華月炎

□幼馴染の幸せ。
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―アナタ達二人にはいつでも笑顔でいて欲しい。
 今の、この幸せな時代で。
  アナタ達がいてくれたから、今、ここにワタシはいる―。
   笑顔でいられる。




幼馴染の幸せ。【星乃光輔×月乃千影+神藤和泉】




「……で、今回は何したのよ?」


目の前に座っている黒髪の少年に対し、和泉は怒りを込めた声で問いかけた。

「だから、誤解だって言ってんだろ?あの女がいけないんだって!!」

黒髪の少年―星乃光輔は必死に弁明する。
自分は悪くない、と。

しかし……。

「私さぁ……」
「は、はい……」

あまりにも冷たい視線を和泉の紫苑の瞳から受け、光輔は思わず敬語になる。
今にもこの場から逃げ出したい気持ちでいっぱいだが、そんな事をしたらどうなるかは目に見えているので、心の中で思うだけであるが……。

「“千影のこと泣かせない”。って約束だったよね?……“こーちゃん”」

そう言う和泉の表情は、さっきとは打って変わって満面の笑みを浮かべている。

「だっ、だからその“こーちゃん”はやめろよ!!」
「幼馴染のこと、あだ名で呼んで何が悪いのよ」

幼い頃、和泉は千影を“ちーちゃん”、光輔を“こーちゃん”と呼んでいたのだ。
今ではあまり言う事は無くなったが、今回のように使うことも多々ある。意図して使う場合もあれば、とっさに言ってしまうこともあるようだ。

「だいたい、光輔が千影のこと泣かせるのがいけないんでしょ?何やってんのよ……」
「だから、あれは……」



光輔の説明によると、出かけた先で学校の女子に話しかけられ、逃げられなかったところを、恋人である千影に見られた。と、いうものだった。

「バカ?」
「……何もいえません」

話を聞いた和泉は、今度は呆れてしまった。

「(……まぁ、光輔も性格が優しすぎるし、千影もちょーっと勘違いが激しいトコあるからなぁ)」

和泉は、光輔に気づかれないようにため息をついた。


千影は、光輔とは別の学校に通っている。
学校での光輔の姿を知らない分、不安があるのだろう。
それでなくとも、母親譲りの金の髪と碧い瞳のせいで昔から周りに色々と言われ他人に対して恐怖心を持ってしまった彼女である。信頼している大好きな光輔を奪われたくないという気持ちも人一倍強いのだろう。


「光輔、千影とちゃんと話した?」
「……電話しても出ねぇ」

むすっとした表情になる光輔。

「(重症ね)」

暫く考えた後、和泉が椅子から立ち上がった。

「千影、呼んで来てあげるから、ちゃんと話し合ってよ?」

そう言うなり、和泉は店を出て行った。



「光輔…」

和泉が帰ってから三十分は経っただろうか?
不安げな表情を浮かべた千影が店に入ってきた。その綺麗な碧い瞳には、戸惑いの色が見え隠れしている。

「千影……ごめんっ!!」

光輔は勢いよく席を立ち上がると、千影のもとに駆け寄り、抱きしめた。

「えっ……ちょ、ちょっと!?」

突然の行動に、千影は驚くばかりである。

「オレが悪かったよ……。ごめんな?」

抱きしめた状態のまま、光輔は再び千影に謝った。

「もういいよ……。私も、勝手に勘違いしちゃってごめんね?」

千影は、光輔の抱擁に答えるかのように、自らの腕を光輔の背中に回した。


「でも、もうあんなことはないようにね?」
「わかってるよ……」
「光輔のこと大好きなのは、私だけなんだからね?」
「あたりまえだろ?千影のこと大好きなのもオレだけだぜ?」


二人が注目されていることに気がつくのは、まだまだ先―。



END

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