ゆめ
□火傷する魚
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触れられたところが熱を持つ。それはあつくて火傷しちゃいそうなくらいの、熱。
『神田、離し…』
「嫌だ」
魚は人の体温に触れると熱くて火傷してしまうという。わたしはきっとそれだ。神田に触られると痺れるような熱に襲われる。
彼の腕の中に包み込まれると、いつも逃げたい気持ちでいっぱいになる。あつくてどきどきして真っ赤になって死んじゃいそうになる。
でもずっと抱きしめててほしいとも、思う。肌に染み込んでいく、この痛いくらいの熱から抜け出せなくな、る。まるで麻薬みたいに、
「はっ!顔真っ赤」
『それは神田が…!』
俺がなんだよ、不敵に笑って神田はわたしの鼻のてっぺんを甘噛みした。
ますます顔を赤くするわたしの反応をおもしろがって、さらに抱きしめる腕に力を入れる神田。
『ちょっ…神…』
心臓が爆発寸前で全身火傷したみたいに体中があつくて、もう限界だと抗議しようとしたわたしの口は、鼻から降りてきた神田の唇に甘く塞がれた。
(離れ たい、)
(あつくて死んじゃう…!)
それでも、
言葉とは裏腹にぎゅっと神田の大きな背中を抱きしめ返す自分がいて。わたしの唇にくっついたままの彼のそれが、にやりと口角を上げたのがわかった。
ああ、溶けていく。
火傷する魚
(捕まった魚は、)(もう逃げられない)
*END*