妄想〜パロディ〜小説
□Be shy Singer
1ページ/16ページ
それは仕事から逃げ出して、ある街に行った時だった
風に乗って歌が聞こえてきた
その歌はとても優しくていい歌だったのに、どこか不安定な歌だった
『Be shy Singer』
「確かこっちから聞こえたような…」
そう言ってサングラスをかけた茶髪の1人の青年が街中を歩いていた。
そしてまた風に乗って聞こえてきた歌を頼りに、再び歩き出す。
「…ここだ」
そこは若者が休日集まって道端で自身の歌を聞いてもらう――ストリートライブ
そして聞こえてきた歌は、今まさに歌っている1つのグループのものだった。
歌を聞いた率直な感想は、やっぱり不安定。
キーボードの音がドラムやギター、ベースにボーカルに負けている…
個々の音が強すぎだな…
青年がそう思いながらそのグループを見ていると、中に知った顔があった。
それに驚きながら聞いていると―――
「このグループ歌だけしか取り柄がないな」
「全体のバランス悪すぎ」
「早く終わんねぇかな」
青年の耳に酷い言葉が聞こえた。
彼等だって真面目にやっているのに…
怒った青年はお節介になるかもしれないと思いつつも、先程酷い言葉を言った彼等を見返してやりたいと、歌っているグループの中に途中から入った。
.