BOOK・・

□わっちが選んだものー永遠の花という名のー
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『 』


『 』



にこッと笑うわっちの顔は、晴れ晴れとしていて。
銀色の天パのぬしに向けて笑い出していた。

ぬしも、怒りながらも、照れ笑いしてたあの日の事を。


わっちは、いつのまにか忘れてしまうのか。

パズルのピースが崩れ去る様に・・。


それとも・・・わっちは・・。



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『月詠姐。大丈夫??ちょっとうなされていた気がしたんだけど・・。』


目をスゥと開ければそこには、心配に見つめている晴太の顔。

少し机の上に頭を乗せ、仮眠をとっていただけなのに。
晴太が気にかけるぐらい、かなりうなされているんだと、月詠は気づかされた。

クシャと晴太の髪を撫で『わっちは、大丈夫じゃ。晴太・・そろそろいずみ殿の見送りに行く時刻でありんすよ。』と心配させまいと、笑いかけた。

月詠の言葉に、時刻を確認した晴太は、『そうだった。月詠姐はとりあえず休んでおく事だよ。これ以上無理したら・・。』と急いで草履を履こうとする隣で、月詠も『いず
み殿は、晴太の大切な友人である故。わっちも顔だけでも見たいんじゃ。だから・・晴太一緒に行ってもいいでありんすか??』と晴太に尋ねた。

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ターミナルは、ここから何かに逃げようと人衆が、ガヤガヤと騒いでいる。

それもあの病のせいだと、月詠は実感する。
金を持っているものは、宇宙に逃げ、病を恐る者は発生源となるここから遠くへ逃げていく。


その騒がしい中で、少女と少年が向かいあって立ちすくんでいた。


『さようなら。・・晴太くん。こんな形でさよならしたくなかったけど・・。』いずみちゃんは、寂しそうに俯いていく。

それを見た晴太は、自分の袖をギュッと掴み何かを決心したかの様に『 いずみちゃん!!オッ、オイラ・・。 』と口にすると、いずみちゃんは笑いながら電車の中へと入っていった。





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『あの子が『必ずいずみちゃんを迎えにくるから。待っててほしい。』ねぇ・・。』ふふふっと笑う日輪の近くで月詠は煙管をフゥと空に吹き掛けた。

『あぁ。もう晴太も立派な男でありんす。なぁ、日輪・・螢の事は覚えているでありんすか??』

『当たり前じゃない。
私の大切な妹が恋を自覚した日だから忘れもしないよ。』

『あっあれは惚れ薬のせいで・・今も昔も・・って日輪ー!!!』

『ふふふっ。ごめんなさい。あんたがこんな話しないから、つい・・・。』と両手を重ねあわせて謝っているが、日輪の顔には反省の色なんてない。

『で、螢はあれからあの想い人の側で幸せに暮らしていたんでしょ??』

『日輪には、何も隠せ通す事は出来ぬな。ああ。そうじゃ・・。』月詠は空を見上げた。
吉原から太陽が拝めるのも、あいつのおかげ。
螢を助けあげたのもあいつがいてくれたから。

そして、わっちも・・。




月詠はあの日の事を思い出した。




ーーーー最初は惚れ薬のせいだと思ってた。


『俺の女に手を出すな。』


『死神太夫は俺の永久指名だ。誰にも指一本触れさせねェ。』


『お前が望むなら、俺はお前のものだけのものになってもいいよ。』


『その代わり死神太夫。お前も落籍される覚悟はあるんだろうな。』


ーーーその言葉に胸が高鳴っていき



『なーんてな。悪ィ、やっぱ調子でねェや。』

『やっぱダメだ。ホントに口説きてェ女は、いつもみてェに・・いかねェや。』




ーーーその
言葉で、わっちの理性すら刈り取られて行ってしまった。
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