自作小説

□蒼の種子
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 赤、朱。

 いや紅。

 空、大地も全て。

 俺の目に映る景色が、そこに絵の具を雫されたように紅に染まっている。

そして燃えていた。

 気づけば手には滑り気。

 手をかざして見ればそれも紅。

 俺は幼いからかコレが何なのか解らない。

 目の前、周囲に転がっている肉塊たちが何だったのかも解らない。

 理解しようとしても頭がそれを拒絶して離さない。

 しかし幼い俺は考える事を、足掻くのを止めない。

 這い蹲った体を片膝を立てて起こし、ヨロケながらも一歩進む。

 また一歩、そして一歩。

 更に一歩で、何かが左足の先に当たる。

 右肩から半分になった人形だ。

 何か見覚えがある顔をしているが、きっと勘違いだ。

 ーこれは違う。

 俺は足先に引っかかった人形を非力な力ながらも退かし、また歩み出す。

「・・・い、あた・・・ま」

 今気づいた。

 頭が重く、うるさい。

 鐘の音のような騒々しい音と、左右に揺すられるような気ダルさ。

 たまらなくなり、左右によろけながら額のあたりを強く抑える。

 ー・・・?

 そこに、硬質な感触。

 円錐のような短い形状。

 鈍痛が走る頭の表面。額の右上あたりに、それが空に向けて生えている。

「な、にコレ・・・」

 解らず、そしてどうでもよくなる。

 俺はそれの先っぽに触れた右手に軽い痛みを感じたところで、気にするのを止めた。

 再び、歩く。

 それからしばらく。

 一歩、二歩、三歩。

 歩き続けた先には、やはり。

 紅。
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