ヴァンガード小説
□プレゼントは誰のもの?
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「さあ、みなさん。そろそろお帰りの時間ですよ。」
外の身を切るような寒さに比べて、色とりどりに飾り付けられた店内は、暖かな雰囲気に包まれていた。クリスマスを明日に控え、子どもたちは一人、また一人と帰っていく。
「もうそんな時間かよ〜」
テーブルの上にカードを広げていたカムイは、遊び足りないというように声を上げた。
「せっかくのクリスマスなんですから、家族団らんで過ごしてください。あ、もう暗いから気をつけてくださいね。」
「早く寝ないとサンタが来てくれませんもんね!」
とうに身支度を調えたエイジとレイジは、子どもらしく目を耀かせた。
きっと、ケーキやごちそうが待っているのだろう。
「もう小六だぜ。
サンタなんていないに決まってるだろ!」
自分はそんな子どもだましは卒業した、と言わんばかりに振舞っているが、さっきからソワソワと時計を気にするカムイを、店長は微笑ましく見ていた。
「カムイくんがいい子にしてたらきっと来ますよ。」
「ワクワクしますね!」
「W.Kッスね!」
「バ、バッキャロー!」
三人は楽しげにはしゃぎながら帰って行った。
それを見送った櫂とアイチは、顔を見合わせた。
「騒がしいヤツだな。」
「ふふっ…。でも僕、分かっちゃうなあ。」
「何だお前、まだサンタなんて……こほん、信じてるのか?」
「さあ…見たことないし、サンタは来たことないよ。残念ながらね。」
アイチは気にしてはいないようだった。
「でも、もしかしたら……
なんて、期待する気持ちはわかるよ。」
アイチの口元には微笑が浮かんでいる。櫂はうつむいている彼の手元を覗いた。
「ところでお前、何してるんだ。」
アイチの手から膝にかけて、赤い毛糸の編み物が垂れ下がっている。
「サンタさんにあげるの……」
アイチは赤い毛糸を指に巻きつけながら、まごまごと呟いた。微かに頬が赤い。
糸を交差させながらどんどん指に巻き付けていく。
櫂は目をしばたたかせてから、ため息を吐いた。
「…それでどうやってこの後ファイトする気だ?」
「あ……」
転がった毛糸玉に店長代理がじゃれついた。