ヴァンガード小説

□恋風
1ページ/6ページ

開かれた教室の窓から、桃色の花弁が一枚、ひらりと入ってきた。

「春だねぇ。」

窓際の席で机に肘を着いていた三和は、窓の外に視線を移し、春の陽光眩しげに目を細めた。
「春ならもうとうに来ているだろう。」
向かいに座っていた櫂は無感動に言った。
教室の窓辺から満開の桜並木が見渡せる。
「違う違う。
誰かさんに春が来たってこと。」
三和は肩を竦めながら、意味有り気な視線を櫂に向けた。

新年度を迎えて、カードキャピタルはまた賑わいを見せている。新たにカードを始める子もきっといるだろう。その子達がまた互いに競い合いながら、友達になり、仲間になり、ライバルになるんだろうな。とアイチは微笑ましく店内を眺めた。
もちろん馴染みの顔ぶれも揃っている。
特にアイチの目を引いたのは、こちらに背を向ける、鳶色の髪の少年。その向かいに座る金髪の人の良さそうな彼が、自分に気づいて手を振ってくる。櫂は少しこちらに目を向けただけだった。アイチが微笑みかけても笑うことはないが、アイチにはそれで充分だった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ