小説1
□僕の夏休み
1ページ/7ページ
ー小さい頃から時々変なものを見た。
他の人には見えないらしい、それはおそらく妖怪と呼ばれるものの類ー。
「ほら、お前らー。席つけー」
ガラリと教室のドアを開け、どこかだるそうに入ってきた担任。
「じゃ、夏目。また後でな」
「あぁ」
それによって、皆そわそわした感じで席に戻って行く。
俺たちも例外ではなく、西村は席に着いた。
-夏休みに行くところ-
「明日から夏休みだ。皆、ハメを外し過ぎないように!」
「おおー!」
生徒たちの歓声を他所に、担任の先生はニヤリと口角を上げる。
手に持っているのは、そう…夏休みに入る時に配られる、生徒たちをどん底に陥れるアレ。
「さぁ、お待ちかねの通信簿配るぞー」
「「えぇー‼」」
生徒たちの心が一つになる瞬間。
出席番号順に配られる、通信簿。それを見て顔を青くする者や、思ったより良かったと安堵する者など様々だ。
「次、夏目、夏目貴志ー」
「あ、はい!」
ぼーっとしてると二回も先生に呼ばれてしまった。
恥ずかしい。
通信簿を受け取り、席に戻ると、あまり見たくない気持ちでそろーっと中を開いた。
「…うん。まぁまぁか」
授業中は寝てたり、帰ると妖に襲われたり、名を返したりと。全然勉強できる環境じゃないが、元々頭は悪い方ではない。
というものの、以前は親戚の人たちに迷惑を掛けないために、必死に勉強したもんだ。
特に子供同士で遊ぶわけでもない。本を読むか勉強をするしかなかった。
だが今は違う。
学校は楽しいし、妖と関わるのも、それほど嫌ではなくなった。
何より、帰りたいと思う家がある。
→