小説1
□無自覚デート
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たまたま目についた一冊のアルバムをゆっくりとめくっていると、ふとその手を止めた。
「ボッスン!ボッスーン!!」
「どうしたヒメコ!何かあったのか!?」
「ちょ、見てみぃコレ!懐かしない?」
「ん? これは……うわ、懐かしいなー」
「せやろ?この頃のあたし、めっちゃ若いわー。あんたも若いけどな!」
「おめー、おばさん臭いぞ?」
「うるっさい!」
「……初デート行った時の写真、だよな」
「せや。あん時はデートなんて考えてなかったけど、今思うと立派なデートやんなぁ」
「あの時のヒメコ、すっげぇ可愛かった」
「今は?」
「ババァに…ってえ!ごめんて!嘘、嘘だから、頬つねんなっ」
「それがあんたの本心っちゅうわけやな!?」
「嘘だって。だからほら、拗ねんな」
「じゃあ何やねん!」
「可愛さよりも綺麗で美人になった」
ずるい、ずるい、ずるい!
こいつは昔っから恥ずかしいことを、さらっと言ってのけんねん!
嬉しいのに、それを言葉や態度に表せないのは……あたしも変わらんなぁ……。
ヒメコこと鬼塚一愛が藤崎の姓に変わり、数ヶ月が経とうとしている。
手にしたアルバムの中の一枚の写真。旦那であるボッスンこと藤崎佑助と自分の写った写真。
そこには微妙な距離を保ちながら初々しさが伝わってくるような、若き日の自分達が満面の笑みで撮られていた。
話は数年前に遡らなくてはならない。
[無自覚デート]
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