【連載】捨てられた華の名は
□光の雨
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暖かい。
薔薇の柔らかな香り。
雨も当たらない。
目を開ける。
「イっ…」
酷く頭痛がする。
そして明るすぎる証明に目が眩む。
ここは一体何処なの?
美しいアンティーク家具に小さなシャンデリア。
ヨーロッパ調の一室は、まるでマリーアントワネットの貴族の部屋へタイムスリップしたかのよう。
「な…なんなの?この部屋?」
ーーーーーーコンコン
え?誰?
「…は、はい」
ドアの向こうから、何やら聞き覚えがあるような、低い男性の声。
「失礼致します。」
ドアが開くと、ひょろっと背の高い、眼鏡をかけた男性が一礼。
「ようやくお目覚めになられましたか?ご気分はいかがでしょうか?」
スーツを纏い、背すじがビシっと伸びているこの男性。
いかにも執事。
誰がどう見ても執事の風貌。
ますます訳がわからない。
私は唖然としてしまった。
「いかがなさいましたか?
もしやご気分が優れないのですか??」
ハッと、私は取り急ぎ応える。
「あ!いえ!大丈夫です。」
「それは良かった。では早速ですが、まずアナタ様にはお風呂に入って頂きます。その後は身なりを整え、パーティーへご出席して頂きます。」
たんたんと話す執事らしき男性。
私の脳内は疑問符だらけ。
気付けば口が空いていた。
「ご理解頂けましたか?そんな阿保面されても困りますが?」
え?
阿保面?
「…はぁ?」
「ですので、その阿保面をやめて頂きたいのです。おわかりですか??」
「いやいや…ちょっとなんなのよ。いきなりいろいろ言って!パーティー?!阿保面?!?!何がなんなのか、全部説明しなさいよ!!」
不安感より憤りが先に込み上げてきた。
その執事はまた、たんたんと話す。
「説明と言いましても。アナタ様とお話しをされるのは我が主。私からは何も話すことはございません。とっとと、準備なさって下さい」
この執事、目力怖い。
本当に何がなんなのかさっぱりわからない!!
「そもそもあなた何者なの?!
まずは名乗りなさいよ!!」
小さな溜息をつくと、
「まあ、それもそうですね。」
ビシっと姿勢を正し、私に一礼をしながら
「私、このお屋敷で執事をしております。
"安元洋貴"と申します。
以後お見知りおきを。」