あつみな3 〜夢の河〜

□夢の河の向こう側
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敦子side…


『なっ?!何でっ!!』


事務所のデスクに 

置かれた週刊誌。



『この日は…打ち合わせだって呼ばれて行っただけですっ!』

「……わかってるわよ。私が伝えたんだもの(笑)」


『反論して下さい!事実ではありませんって!!』

「……どうして?」



……え?どうして?って?



『……困ります。誤解されたら。』

「……誰によ(笑)。」


誰にって……


『りょっ両親だって心配しますし、それに……』

「ご両親は大丈夫。私から説明してあげるわ。あなた今、他に誤解されたら困るような人いないわよね?」



『……っ。』



あたしのマネージャー。



高校の時あたしに

恋愛禁止条例 を言い渡した人が、




腕を組んであたしを諭す。



「良い?主演俳優と相手役の熱愛が出れば、映画は注目の的よ。」


……なにそれ。


「あなたの名前だって、あっという間に知れ渡るでしょうね。」





「失礼します。」

部屋に誰か入ってきた。



あたしは構わず

マネージャーに叫んだ。


『そんなんで……注目されたくないっ!』

「甘ったれないでよ!あなた自分がどれだけだと思ってるの?」



バタンッ!

部屋を飛び出した。




……悔しくて涙が滲む。



事務所の倉庫に

立て籠った。



コンコンッ。



「あっあっあのっ……まっ前田さん?」


……あ。

そっとドアの隙間から覗く。



『……指原。』




倉庫のドアを開けた。


『入って!』



また ドアを閉めて鍵をかける。



「すっすみませんっ。指原なんかと……熱愛とか……っ」


『何言ってんの。あたしより指原のが売れてんだから、メーワクなのはそっちでしょ?』




指原莉央。



あたしの『熱愛』の相手。



ヘタレキャラが 似合いすぎだって


今 スッゴい人気が出てる。



「さっ指原は……メーワクなんかじゃ……」


『だって、女の子のファンががっかりするよ?』



「前田さんは……イヤですよね?指原が、カレシとか……リアルでは あり得ないですよね?」

『え?』



コンコンッ!



「敦子!あなたはまだ籠ってて良いわよ。今日は夜の舞台挨拶だけだし。でも……」


マネージャーの声。



「指原くん!あなたは昼の舞台挨拶があるでしょ。もう行かなきゃ間に合わないわよっ。」


カチャ。


二人とも倉庫から出た。


「忙しいのにごめんなさいね?敦子、いい加減わきまえなさい!」


無視して、部屋を出た。




どーせ夜まで籠ってて良いんなら、


それまでは自由でしょ。



「敦子。車で帰りなさい!今呼ぶから。」



マネージャーに腕を掴まれる。



「良い?誰かに何か聞かれても、否定も肯定もしちゃダメ。わかった?」




そーいう世界なんだ。




あたしが選んだ道は。






力なく頷いた。
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