あつみな〜小さな恋のものがたり〜
□スイート&ビター
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敦子side…
夕方からキッチンを貸し切って、
あたしはチョコレートと格闘中。
「敦子ぉ?ちょっとママもやるから貸して?」
『良いのっ!一人でできるからっ』
「でも…」
『いーからあっち行ってて!!』
「敦子が手作りしたいなんて珍しいのね。」
……ドキッ
「だれか好きな男の子が出来たの?」
『そっそんなんじゃないよっ!友達が……はっ陽菜が手作りで交換しようって!』
「ふふふっ。」
何で笑うのっ?
「あっ、出来たら南くんにもあげたら?」
……ドキッ//
『なっなんであたしがっ。』
「いつもお世話になってるじゃない。」
そう言い残して
ママはキッチンから出ていった。
……何か、もぅやだ//
「……家の中甘ったるい匂いで迷惑なんだけど。」
入れ替わりで敦がキッチンに入ってきた。
『窓開ければっ。』
「……やだよ寒いから。」
『じゃあ手伝ってよ!』
「……一人で頑張るんじゃないの?」
『うっ……うるさいっ!』
刻んだチョコレートをつまみ食いする敦。
『ちょっとっ!』
「……南、喜んでくれるといいネ。」
『もぅあっち行けーーっ!!!』
あーもぅっ。
……買っちゃおうかな。
南なら『手作り』って言えば、
ペコちゃん描いてあっても信じそうだし……。
南……。
ふっと思い浮かべる。
笑顔を、声を、ぬくもりを、唇の感触を……////
……頑張ろっ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
晩ごはんも放棄して、
あたしはチョコレートと向かい合ってた。
パパもママも寝ちゃって、
敦も自分の部屋に戻って……
時計が11時を回る頃。
『……できたっ!』
初めての手作りチョコの
出来上がり……!
南、喜んでくれるかな?
早く渡したいな♪
静かな玄関。
あたしはそっと鍵を開けた。
外の冷たい空気が気持ちいい。
自転車のカゴに 出来立てのチョコを入れて。
あたしは南の家へ向かった。