バスケ部男子×演劇部女子

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 文化祭――それは文化部の活動を全校生徒に知ってもらう、文化部にとっては花形行事である。
 うちの演劇部も例外ではなく、6月あたりから練習を一生懸命してこの日のためにすべてを注いできた。

 1年ながらに私はまあまあいい役をもらって、まだ慣れないけど一生懸命だった。先輩たちに引っ張られながら、裏方・キャスト合わせて総勢10名、ギリギリながらに今日のために頑張ってきた。

 なのに――。



「おい!誰か冷えピタ持って来い!!」
「早くこの荷物どかして!!」
「おい、大丈夫か!?おい!!」



 先輩の一人がセットの下敷きになって怪我をしてしまったのだ。酷いものではないが、勢いよく捻ってしまったらしく走ったりなどの演技ができない。
 セリフが少ない役だったとはいえ、彼も十分大事なキャストだ、いないと劇が成立しない。
 だからと言って代役を頼むほどうちの部活は人数がいない。先輩がいたとしてもキツキツなのに…。



「ねえ涼葉、どうなっちゃうんだろ…」
『わからない…』



 不安げな表情で友人は私に声をかけてきた。正直本当にどうなるかが判らない。
 このまま先輩なしで劇を進めようにも、案外必要な役だし、いないと私の役が映えないのもある。

 ざわつく舞台裏を静めたのは部長だった。ただ一言、「あ!!」といっただけだったけど部員全員が黙って彼女のほうへ視線を投げた。



「親友剣士だったらセリフは5つだけよね?」
「え?あ、はい…」
「…ちょっと代役を頼んでみるわ!聞いてもらえるかは判らないけど、ピッタリの逸材がいるわ!!」
「「「えぇっ!?」」」



 逸材って誰だ?
 とみんな思ったけど、その心の問いに答えることなく部長は舞台裏を出て行った。



 とりあえず状況説明をしよう。
 今回私たちがやる劇は「姫と剣士の叶わぬ愛の物語」である。

 一国の姫とその護衛である剣士との間に恋心が芽生えるが、隣国との戦争に剣士は駆り出されてしまい、結局姫と剣士は結ばれることなく終わるという、まあパターンなお話だ。
 ちなみに私は姫の護衛役であり、こちらはアナザーストーリーがあるが今は関係ない。

 怪我をした先輩は主人公の剣士の親友役で、部長がいう通りセリフは5つしかない。

「またオマエと一緒に戦えるとはな」
「オマエの背中はオレが守る」
「ぐわっ!」
「オレの事はいい、先を急げ」
「一生 姫を守りきれよ……がくっ」

 これだけ。

 演劇部の誰かだったらアドリブ利いたりとかできるけど、経験ない人に代役頼むのは…大丈夫なのだろうか?

 でも「大丈夫」だって祈るしかない。
 演劇部の発表まで…あと1時間をきった。




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