短編(その他)

□楽師と金の靴と
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SoundHorizon童話。旅歩きの楽師と聖女











昔、ある森の屋敷に少女がいた。
その少女は生まれてすぐに死んだことにされ、土の下に埋められたが、母親の懇意によって仮死状態のまま掘り当てられ、森の賢女の元へ連れられ、息を吹き返した。
死んだことにされていた少女は、森の屋敷で独り育った。

そんなある日、少女は月光の夜にある少年と出会った。
少年もまた、拒絶された存在だった。
少年と少女は惹かれあい、互いに大切な存在となった。

しばらくしないうち、少年がこの森を去ることになり、二人は離れ離れになった。
それきり二人は再び逢うことはなかった。


その少年への恋心により磔刑になった少女は、後に神へ純潔をささげたとして、聖女として崇められた。
それから幾許かの時が過ぎ、参詣の途絶えたその教会で、ひとりの青年が参詣に訪れた。

その青年は旅歩きの楽師である。
教会を訪れた彼が御像の前でひざまずくと、どこからか金の靴が落ちてきた。
青年は驚いたが、聖女の慈悲と捉え、ありがたく頂戴した。

しばらくして教会が慌ただしい空気に包まれた。
聖女の御像の足に履かれた金の靴が盗まれたと騒ぎになり、牧師たちが現れた。
そこに金の靴を持った楽師を目撃した牧師たちは彼を捕らえた。

彼は教会の地下に閉じ込められ、数日がたった。

教会の御物を盗んだ罪で青年は死刑を告げられた。

外の刑場に連れ出されようとした時、青年は
「せめて最期に聖女様の元へいかせてください」と懇願した。
牧師たちは了承し、彼を御像の元へ連れ出した。


そこで楽師は
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