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□2人目の『ブラック』の入学
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わっと、赤色のローブをまとった生徒たちのテーブルが沸いた。

組み分け帽子を脱いだ少年の髪は黒く、今は伏せられた瞳は青みがかった灰色。シリウスはそれを、誰よりもよく知っている。
ゆっくりと、顔が上がる。繊細な、どこか少女めいた面差し。自分とよく似ていながら明らかに異なる、顔。

その視線がこちらを向き、そして緊張に強張ったかのような顔がゆるりとほどける。それはやがて、柔らかな笑みに変わった。

「おめでとう、レギュラス」

微笑んでそういった自分の声は喧騒の中でも少年に届いたようで、一気に再び静まり返った大広間の中で、レギュラスの歩む音だけが響く。
グリフィンドールとスリザリンのちょうど間で、レギュラスは歩みをとめた。そして、一度目を伏せ、そして顔を上げる。

ふにゃりと輪郭をおぼろにした瞳を見て、シリウスは立ちあがる。マクゴナガルが何やら言っていたが、気にしない。立ち止まる弟に駆け寄り、ためらうように少し離れた場所で、立ち止まった。

「…兄様」

微かに、縋るように。思わず、といった風にこぼされた声に、震える足で残りの距離をゼロにする。

「レギー」

手を広げれば、待ちかねたように飛びこまれた。それを柔らかく、大切に抱きしめて、安心させるように囁く。
「大丈夫だ。お前は俺の弟なんだから。…もし虐められたら、兄様が絶対に報復してやるから、な?」
「兄様ぁ」

「寂しいか?なら約束しよう、月曜日と水曜日と金曜日は、兄様がおはようを言いに行ってやる」
「火曜日と木曜日と土曜日は?」
「お前が俺のところに、おはようをいいにおいで。」

いやいやというように胸元に顔をすりつける弟は、可愛い。ものすごく可愛い。が、それを今言ったらだめだ。

宥めるように髪を撫でれば、ぼそりと一人だけ大人ぶるのは許しませんよ、とシリウスにだけ聞こえるように囁かれた。恐る恐る表情をうかがうように長いまつげの下から自分を見上げるその目は、残りの顔のパーツとは異なり面白がるような輝きを宿している。

「月曜日と木曜日は、最低一食隣でご飯を食べること」

指切りをするように指を差し出せば、おずおずと見えるように指が絡められる。外から見える部分に関しては、完璧だ。シリウスの胸元に隠れるからと、レギュラスは見えないところではやりたい放題をしている。
まぁその強かさも、今のシリウスにとっては『可愛い』の一言に尽きた。

「…ほら、いっておいでレギー」
「……はい、行ってきます、兄様」

名残惜しげに身を離し、グリフィンドールの席に着くレギュラスを見送ったシリウスは、そのまま優雅に礼をし席に戻った。その瞬間、時が流れ始めたように喧騒が戻ってくる。


次の名が呼ばれ、注目はそちらに移る。席に着いたシリウスに不安げな目を向ける親族たちに、シリウスは不遜に微笑んだ。

「心配せずとも、あの子の土日は俺たちのものだよ」

それにナルシッサがぱっと表情を明るくし、アンドロメダと視線を交わしあった。
外の世界が闇に包まれていようと、このホグワーツだけはやはり平和なままだった。







「あのブラックが」「ブラコン…?」「ブラコンってなんだっけ、ブラックコンプレックスだっけ…」
そんなこそこそとした囁きが大広間に広がっていたことは、シリウスの預かり知らぬところだった。
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