★小説★

□マゾリックス エロリューションズ
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好きよ好きよキャプテン
忘れないわきっと
生きることと恋を教えてくれたの

──ザ・リリーズ『好きよキャプテン』より



【マゾリックス エロリューションズ】



『やべぇ!日向!遅刻だ!!』
『あわわわわ…キャプテンに怒られるぅぅ!!』

影山と日向は焦っている。
部活前にちょっくら校外に出て行ってすぐ帰る予定だったのだが、
予想以上にその予定が長引き部活開始時間に遅れそうになってしまったのだ。


『だから俺ぇ無理せずに日曜日に買いに行こうって言ったのにぃ!』
『あ?日向!お前だって今日ど〜しても欲しいっつっただろうが!』


遅刻の原因、それは
二人のハマっているゲームが今日発売日だったからだ。
近くのおもちゃ屋に二週間くらい前、予約をしておいたのだが、
発売日の今日、それを取りに行ってすぐ戻って来る予定だったのだ。
しかし大人気ゲームを求めようと予約殺到したおもちゃ屋は、
それを受け取るだけでも30分並ばなければならなかったのだ。


『だってあんなに並ぶと思わなかったんだもん!』
『大丈夫だ大丈夫だ、走ればギリ間に合う!!!!』


ドドドドドドドド


二人は猛ダッシュしている。
ダッシュしながら会話が出来るのは日頃の鍛錬の賜物だ。

だがしかし

時間は無情にも過ぎ去っていく。


二人が体育館に到着した時は既に、部活開始時間を5分過ぎていた。
たかが5分。
されど5分。

運動部の5分遅刻は死刑宣告のような重みがある。


『ちわっス!』
『ざいぁっス!』


それをごまかそうと元気に挨拶をして練習に何食わぬ顔して溶け込もうと思っていたのだが…


『あ、おはよー♪』
『おめーら遅ぇぞw遅刻かぁ?ははははは!』
菅原先輩や田中先輩は笑いながら迎えてくれた。

だがしかし

『あ、お前らやっと来たのか?』
妙にニコニコした顔の澤村キャプテンがこっちに来いと手招きしている。
恐ろしい程の笑顔にただならぬ殺気を感じた菅原と田中はそそくさと練習に戻ってしまった。


『ほら〜…何ぼさっっっと突っ立ってんだよ〜♪こっち来いってば☆』

既に練習を始めている部員全員がチラチラと様子を窺っている。


影山と日向はびくびくして凍る背筋を伸ばした。
そしてすごすごと澤村キャプテンの所に寄っていく。


『理由は?』
澤村が笑顔で聞いた。



『あのっっ!ちょっと発売日のゲームを…』
『あ!バカ!日向!!』

影山は咄嗟に日向に口をつぐませようとしたのだが遅かった。
ゲームという言葉にピクンと澤村が反応した。
おでこのあたりにぴきぴきと青筋が立っているのを影山は見逃さなかった。


遅刻した理由をまさか日向が正直に言うなんて。
口裏合わせして上手い言い訳を考えておくべきだった。
影山は心の中で舌打ちする。


『ははは!正直だね日向。そ〜ゆ〜の嫌いじゃないぜ?』
にっこりと笑顔で答える澤村。

一瞬二人はほっと胸を撫で下ろした。


だが



『だけどその程度の理由で遅刻するとはナメまくってるね☆お前ら二人部活後居残りで説教だから。』



『そんなーーーーーーー!!!!』
『マジすかぁああ!!!!!!!』


どんなにぎゃーぎゃー喚いても、もう澤村は練習に戻ってしまい、二人の方に見向きもしなくなってしまったのである。
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