★小説★

□俺たちにASSはない
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羊の顔していても心の中は
オオカミが牙をむく
そういうものよ。

──ピンクレディー『SOS』より



【俺たちにASSはない】

そう、あの時のオレはどうかしてたんです。

思えば烏野高校のバレー部に入ってそんなに経っていないあの時、
東京から遠征に来た音駒高校との練習試合で気持ちが昂ぶっていたのかもしれません。

せっかく先生が取り付けてくれた練習試合なのに
まさかあんなことがあるなんて…

自分でも驚きでした。



朝、オレたちはまずコートを設置して各自アップを取っていました。
音駒高校が来たらすぐに試合に入れるようにです。
オレは朝からなんだかわくわくしていて…
それは日向も他のみんなも同じだったと思います。

そんな異様な緊張感のある中、ついに音駒高校の生徒たちがやって来たのです。


まずみんなで整列し、挨拶を交わします。

なんだか自信満々な主将や
プリン頭のチビっこい奴…こいつがセッターか。
背が高くて暑苦しそうなミドルの一年。
モヒカンのヤンキーなどなど。
様々なタイプの男たちが並んでいる中、オレはある一人に目が留まりました。


栗毛色の髪に整えられた眉。
身長は日向より少し高いくらいでしょうか?

あの落ち着きようは一年ではないなと悟りました。


にっこりとした笑顔で整列し挨拶。
オレはその人と目が合った時、ちょっとばかりドキドキしてしまったのです。


オレのケツは既に処女じゃありません。
何人かのチームメイトに犯されてきました。

だけど

決して男が好きだとか
決して女を愛せないとか
…そんなことではありません。


それでも確実に言えることが一つだけあります。

それは…
男でも女でも、もうどちらでもオレはセックス出来るカラダなのだ…と。


だから当然その音駒高校の年上のオトコとだってカラダを交わす対象となりえるのです。


嗚呼

オレはいったいどうしてしまったのでしょうか?
そしてどうしたらイイのでしょうか?


その人に目を奪われながら心臓はドキドキし
カラダ中の血液が自分の下半身に流入していく感覚を覚えてしまいます。

それもこれも
オトコのカラダというモノをオレに刻んできたチームメイトたちのせいでしょう。
決して自分のせいではありません。


そしてもう一度その人と目が合いました。

カレは、再びこの目つきの悪いオレににっこりと笑いかけるのでした。
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