★小説★

□ソード オブ ザ 淫具
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愛する人に捧げるため守ってきたのよ
汚れてもいい 泣いてもいい
愛は尊いわ

──山口百恵『ひと夏の経験』より



【ソード オブ ザ 淫具】



『え?それ昨日もやったけど?分からないの?バカなの?』
相変わらず口の悪い月島が影山に向かってそう言った。
影山はぐぬぬと唇を噛みしめながらその屈辱に耐えている。


ここは月島の家。
影山は東京遠征に行く為に赤点を取らないように勉強中なのだった。
今日は家に誰もいないとのことで月島家で勉強することになったのである。

仲の良くない月島に頭を下げようと言ったのは日向の案だった。
これも東京に行くために仕方ない…
そう頭では分かっていても、いざこうやってバカにされると我慢の限界である。


『じゃぁ…どの公式を使えばイイんだよ!!…ですか!!』
影山は屈辱に耐えたまま月島に質問する。
『は?何その態度。ホントに教えてもらいたいの?てか少しは自分で見つけ出しなよ。』
あくまでも月島は意地悪だ。

『あの…影山、ほら、公式まとめたノートがあっただろ?』
横から山口が助け舟を出す。

するとすかさず月島は
『何簡単に教えてんだよ。』
とあきれた声で山口を非難した。

『ごめんツッキー!』
山口は怒りの矛先がこちらに向かないようにさっさと日向の方を面倒みることにした。


『あ〜これか〜♪分かった分かった!なるほど山口天才♪』
横にいる日向は無邪気にも山口に礼を言った。
影山にはその神経が理解できない。


『いや〜♪終わった終わった♪サンキュー山口!がりがり君おごるからコンビニ行かね?』
日向はそう言うと山口の腕をつかんで立たせた。
『え?イイの?悪いね〜♪』
そんな山口はおごってもらえると聞いて素直に喜ぶ。
この二人は案外気が合ってるのかもしれない。


『ちょっと待ってよコレど〜すんのさ。』
そんな二人のやり取りを見て月島が慌てて言う。
影山をコレと指さしてど〜するのだ…と問うているのだ。


『え?影山は月島が担当だろ?』
日向が小首をかしげながら言う。
『勝手に担当制にしないでくれる?』
月島が口答えすると
『でも月島、自分だけ勉強出来ても他人に教えることが出来ない人間…だなんて思われたくないだろ?』
と日向も負けじと言い返すのであった。


ぐっと言葉に窮した月島は
『そりゃ〜…ま〜…そ〜だけど。』
と目をそらす。


『ほらみろ!まずは影山を一人前の男にしてやって♪』
日向は笑顔でそう言うと、山口を連れて外に出て行こうとする。

『待てって!オレを月島と二人っきりにするな!』
影山はイライラした口調で日向を止めにかかる。

しかし

『影山クン♪二人っきりってイヤらしい♪がりがり君買ったら戻ってくるから、ちょっと待ってて♪』
などと一笑にふす。

そして月島にすり寄ると
『ごにょごにょ…』
と何やら耳打ちをした。


『………。だから何だってのさ。』
月島の目線が一瞬泳いだが、すぐに普段の調子に戻って日向に毒づく。


『なんでもね!じゃ〜な〜、またすぐ戻るから♪』
そして日向と山口は笑いながら出て行ってしまうのであった。
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