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□好きが溢れすぎて
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「銀ちゃん、好きアル」
ある日の朝、少女は伝える。大好きな男に。
「天パで臭くてマダオだけど、好きアル」
「……おぅ」
男は応える。好きとは言わないが。
もちろん銀時も神楽のことは好きである。しかし、家族としてなのか、1人の女として好きなのか、明白ではないのだ。
「そろそろ離れようか、神楽ちゃん」
嫌アル、と少女は男に抱きついたまま離れようとしない。銀ちゃんが好きって言ってくれるまで、離さないアル、と。
そもそもなぜこんな状況になったのか。それは、神楽の不安なキモチからだった。
数日前、神楽が銀時に好きというと、銀時も神楽に好きだと言った。
成り行きで付き合うことになったのだが、中々銀ちゃんが好きって伝えないアル、そういうわけだった。
「銀ちゃんは、ワタシのこと嫌いアルか?」
少女は男の寝間着をよりギュッと強く握り、聞く。
「…好きだコノヤロー」
男は、そんな小さな少女の手を掴みながら答える。
「女として、アルか?」
「………」
男は考える。確かに、コイツは可愛い。でも、恋愛対象ではなかった。こんなガキなんて、せいぜい妹、もしくは娘止まりだ。
しかし、いつからか。コイツを女として見てしまっていたのは。
もちろん、大事にしている。それは家族の一員として。大量の飯をペロリと平らげる姿を見ると、微笑ましい。こういう感情は多分家族。おやすみアルと押し入れの戸を閉めるのを見ると、俺と一緒に寝りゃ良いのに、と思う。こういう感情も多分…家族。コイツを見ていると、そばにいたいと思う。こういう感情は…?なんだ、家族か?
「神楽ちゃんは女の子ですよ?女じゃねェっての」
男は軽くあしらうが、それは少女を余計不安にさせた。ぎゅっと握る力が強くなる。
「どーした、不安になっちゃった?」
銀時はそう問いかけるが、聞こえてくるのは外の騒音。
あーもう、何でかな…と、銀時は神楽の顔を優しく上に向けると
チュ、と軽いリップ音をたてて額に口づけをする。
みるみる赤くなる少女の頬。
「い、いきなり何してるアルか!」
「こんなモンで照れるなんざ、大人の女になるのはまだまだだな」
軽く神楽をけなし、そのままいわゆるお姫様抱っこという抱き方でヒョイと持ち上げると、
銀時は寝室に向かった。