めいん
□第一章
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「そおぉぉじいぃぃ──────ッッ!!」
京の都、壬生村。
ここには、泣く子も黙る鬼の巣窟、京都守護職会津藩肥後之守お預かり新撰組屯所がある。
夕方に近い昼時、そんな新撰組の屯所に土方歳三という男の怒号が響いた。
それと同時にドタバタと廊下を走る音がして、拍子をスパンと開ける音が鳴る。
鬼の形相の土方が振り返れば、そこにはニコニコ笑い部屋に入る青年、沖田総司がいた。
「人の返事なしに入室するたぁ、世間に恥かかねぇよう、テメェの躾をもう一度やり直さないとだなぁ、あぁおい?」
「だって土方さん、私の名前呼んだじゃないですか、それはもう勝手に入ってもいいってことでしょう?」
「よかねぇんだよ!!テメェは一般常識をそのバカな頭で一から勉強しやがれ・・・、・・・テメェを呼んだのは他でもねぇ、なんだよ、こ・れ・は!!」
バーンと沖田の前に出した黒い羽織。
それをマジマジと見る沖田。
土方の手はワナワナと震えてるのが目に見えてわかる。
沖田はそれが面白いのかニコニコと顔を緩めっぱなしである。
「なにかいうことはねぇのか?」
「・・・あ、ここの袖、なんか糸解れてますよ?」
「ん?本当か?・・・って、そうじゃねぇよ!!ここにデカデカとテメェの涎が付いてんじゃねぇか!!」
土方が指を指す部分にはおおきな染みが付着していた。
沖田はポンと一つ手をついて、笑う。
「昼寝をしてしまった時についた涎ですねぇ!!見事な円を描いてますねぇ・・・」
「なに関心して見てんだよ、おめぇはよ!!どうしてくれんだ!これ高かったんだぞ、テメェ!!」
ギャーギャーわーわー。
火を噴くような勢いで怒鳴り散らす土方に沖田は、ハァと溜め息。
「土方さん落ち着いて下さいよー・・・別にいいじゃないですか、涎くらい」
「よかねぇよ!!」
ゼェゼェと顔を赤くさせ、息を吐き出し、目の前の沖田を睨みつける土方。
そんな時、襖の外から土方を呼ぶ声がしたのである。