Short story
□星の輝きよりも・・・
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フェアリーテイル
昼間は多くの仲間たちの声で溢れかえるギルド。
夜になると、一変して静かになる。
カウンターでは後片付けに追われる看板娘。
カウンターをはさんで向かい合う1人の男。
「ごちそうさん。」
『あら、もういいの?
1週間ぶりの我が家なのに』
「俺にも飲まねー日くらいある」
『そうね』
「…ミラ」
『なぁに?』
「明後日からまた行ってくる。」
『そう……今度はどれくらい?』
「10日はかかる」
『そう…………』
今度のクエストは異国の地での凶悪モンスターの討伐。
雷神衆が一緒とはいえ、行くのに2日以上はかかる。
ミラは愛しい彼をいつも複雑な心境を隠して送り出している。
「おまえ、このあとちょっと時間あるか?」
『あるわよ♪でも何で?』
「お前と散歩するのに理由がいるのか?」
『ふふwうれしい。すぐ準備するわ』
季節は春めいてはいるがやはり夜になるとまだまだ冷える。
ミラは少し寒そうな格好ででてきた。
「おまえ、そんな薄着で大丈夫なのかよ……」
『大丈夫よ。こうするから♪』
そういってラクサスの大きなコートにもぐりこんで腕を組む。
「////………ったく」
『今日みたいな空気の澄んでる日は星が綺麗なんだそうよ♪』
「興味ねーな」
『そお?』
「……いいとこ連れていってやる」
そういってさりげなく自分の肩を抱くラクサスにミラは久しぶりに感じる彼の体温にひとときの幸せを感じていた。
「着いたぞ」
『ここは……』
「お前、昔よく落ち込むとここに来てただろ?」
『知ってたの?』
「俺を誰だと思ってんだ?
……最近、建物がなくなって眺めがよくなった。
星も……よく見える」
『え?』
「星が見たかったんだろ?」
『うん。
……ほんと、こんな満天の星初めてみたわ……きれい』
「なんかあったのか?」
『…………!!?』
「なんつー顔してんだよ。
お前は落ち込むといつも1人で星をみてる」
『…………』
「冷えてきたな。
俺ん家が近くにある……いくぞ」
そういって寒そうな彼女を再びコートで包み、満天の星空の下を歩き始める