Short story

□確認事項〜ジュビアver.〜
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「…グレイ様」
フェアリーテイルのギルドの席で、かなり思い詰めた顔をしたジュビアが
そう、グレイの名を呼ぶと、徐に顔をあげる。

目の前には、反対側の席でルーシィにじゃれているナツと
側で静かに談笑しているエルザとウェンディ、そしてグレイがいる。
すぐ側に居るグレイに話しかけるものの、
がやがやと五月蝿い程の賑やかなギルドの中では、
ジュビアのかすかな、か細い声は完全にかき消されていた。

「…グレイ様!」
今度は、少し大きな声ではっきりとグレイを呼ぶジュビアの声に
グレイが微かに反応する。
「・・・なんだ?どうした?」
浮かない顔をしているジュビアに、グレイが声を掛けると
ジュビアは祈るように自分の両手を胸の前でぎゅっと組み、
「……グレイ様のパートナー、
本当に、本当にジュビアでいいんでしょうか?」
不安そうにグレイに問いただしていた。

「あぁ?」
まぁた、訳の解らない事を…と言いたげに少し眉を寄せ、
グレイがどう言う事だ?と言葉を続けようとすると、
ジュビアが先に口を開いた。

「だって、ジュビアよりも無駄に胸の大きいルーシィの方が良いかも知れないし。」
その言葉を側で聞いていたルーシィがなぁんですってぇ!と立ち上がろうとするが、
エルザに肩をポンポンと叩いて止められる。
「ジュビアよりも知的だけれど、どこかずれてるエルザさんの方が良いかも知れないし。」
今度はその言葉を聞いたエルザがチャキッと金属の音を響かせ、
即座に自分の腰の剣を抜こうとするが、隣に居たウェンディにがしっと止められる。
「ジュビアよりもお胸は小さいけれど、
しっかり者のウェンディの方が良いかも知れないし。」
それを聞いたウェンディは、じっと自分の胸を見てがっくりと肩を落とす。
側に居るルーシィから、これからよ、これから…と慰められるが、
その声を聞いてか聞かずか、その瞳にはうっすらと涙を浮かんでいた。

そんな女子3人のやり取りを横目で見つつ、
グレイがため息をつきながら、口を開く。

「あのなぁ、今回は仕事の依頼で
マスターから二人で行って来いって言われただけだろっ!」
興奮して一気にそこまでしゃべり終えると、
ジュビアにも解るようにと声のトーンを落として静かにしゃべり始める。

「魔力を総合的に判断してお前とオレがベストだって言われたんだから
お前が悩む事じゃねぇだろ?
さっきまで小躍りして喜んでたくせに、なんですぐそうなるんだよ…」
グレイはもう一度ため息をつくと、そんな事より…と話し続けた。
「お前、今すぐあの3人に謝っとけよ!?」
そう言って、エルザ達の方に視線を向ける。

あの三人?と首を傾げるジュビアに、
「お前、相当酷い事言ってたぜ」
“相当”という言葉に力を込めて、冷ややかな視線をジュビアに戻せば、
「えっ?ジュビア、何か言いましたっけ?」
本気で理解していないジュビアが、唇に人差し指をあてて考え込んでいる。

「…そうか、ジュビアはそういう風に私達を見ていたという事なんだな。
今回、よぉく解った」
鋭い視線をジュビアに向けるエルザの言葉に、
側に居るルーシィとウェンディもうんうんと同意するように頷く。
「えっ?えっっ??」
エルザとグレイを交互に見て困りながら泣きそうになっているジュビアに、
グレイは我関せずとそっぽを向く。

「ル、ルーシィ?」
ジュビアの震えた声の呼びかけにふんっと顔を背けるルーシィと
「ウ、ウェンディ?」
頬をぷっくり膨らませて少し睨むようにジュビアを見るウェンディ。

「あ、あの…ごめんなさい?」
訳が解らずおろおろするジュビアに、これからどんなお仕置きをしようかと
怒った顔をしつつ、内心ワクワクしているエルザが居る。


こうして、フェアリーテイルの長い長い夜は更けていくのであった。

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