Short story

□涙の理由(わけ)
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ジュビアside



ギルドのカウンター

ざわざわと1日のうち最も賑わう夕刻
……のはずが今日に限っては異様な静けさだった。

ミラジェーンがいつも通りではあるが少し困った笑顔で酒や料理を運ぶ。
そのカウンターにただ一人、
つりあがった眉をさらにつりあげて、ピリピリした空気……いや冷気をはなつ一人の男。

そこから少し離れたテーブルに涙をうかべて、じっとりとした暗いオーラを放つ少女。
そのオーラの影響か外は雨が降っている。

この2人のある意味不気味な魔力の放出に、ギルド内は妙な緊張感であふれていた。



「ねぇ……誰かあの二人なんとかしてくんない?
酒がまずくなる」
酒樽をかかえたカナが思わず言った。


そんなこと言われても……
誰もがそう心の中で思っていた所に、タイミングが良いのか悪いのか、
明るい2人組がバン!とドアを開けて帰ってきた。


「ただいまー!腹減ったー!」

「あんたそれしか言えないわけ?!
ほんと単純ね……

てか何!?このじとじとした空気」

ブロンドヘアのルーシィが、いつもの喧騒がない異様な空気を察知した。


「なんだよお前ら〜、どいつもこいつも元気ねーなぁ!」

「ナツがいつも元気すぎるんだよ。ほんとタフしか取り柄がないんだから」

「なんだとー!ハッピー!」

ナツとハッピーの面白可笑しいやりとりがその場を和ませた。

「で、何があったの?この空……!!」

ルーシィが言い切る前に目があったカナが、この雰囲気の原因の2人を指差した。

「あ〜、なるほど……」
ルーシィはすぐに何があったのかを察知した。

「ジュビア、何かあったの?」
意を決してルーシィとミラが話しかける。
ジュビアが涙を拭ってはなしはじめる。

「ジュビア……今日グレイ様と近くに出来た大きいショッピングモールに行ったんです……」

「あんたそういえば今日はめずらしいカッコしてるわねぇ」
ルーシィがジュビアの服装がいつもと違って、自分みたいに胸元と背中を大きくあけ、下着がみえそうなくらいミニのショートパンツをはいているのに気づいた。

「うぅ……」

ミラとルーシィはその言葉に反応してまた涙を浮かべるジュビアにぎょっとしたが、おそらく今日の買い物が原因だと理解した。

「前にルーシィとエルザさんと買い物したときに……お二人から……ジュビアはもっと肌見せした方が可愛いと言ってもらったので、いつもルーシィが着てるような服を買ったんです……

嬉しくなったので……そのまま着替えて近くのロビーで待ってくださってる、グレイ様所にいったんですが……」

「それで今日はそんなカッコしてるのね♪それでなんでグレイはあんなに怖い顔してんのよ」
ルーシィが呆れたように聞くと、ジュビアは涙をいっぱいに溜めて続けた。

「それが……わからないんです(泣)
急に……怒ってしまって……それからランチしても何してもそっけないグレイ様で……
きっと……ジュビアが……この服が似合わないから……」

「ジュビア……」

「グレイ様に……誉めてもらえると……思ってたんですが……ジュビアにはルーシィのように着こなせないんです………グスンッ」

「何でそこであたしが出てくんのよ……」
ルーシィは呆れた様子でつっこんだ。

「大丈夫よ、ジュビア♪
とりあえず……あそこの困ったちゃんに聞きにいきましょ」
にっこりと優しくミラが微笑んだ。
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