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雪ヶ丘高校の3−A組には、
学校中、いや他校にまでも知れ渡っているほど規格外な奴がいる。

容姿端麗、スポーツ万能、頭脳明晰、おまけに性格も良いときた。
これが有名にならずして誰が有名になるというのか。
一部の女子の間では「ファンクラブ」なるものが出来ているらしい。
冗談は存在だけにしておいて欲しいものだ。



「…ほんっと、僕達とは次元が違うよねぇ…。」
ハハハと乾ききった笑みを浮かべる友人にオレは表面上頷きながらも、内心では頭を抱えていた。
次元が違うのには同意だが、奴こと一宮 秋は優等生の皮を被った【悪魔】なのだ。
(どうしてオレがそのことを知っているかは嫌でも後にわかるのだが。)


オレの容姿は精々中の中。頭は下から数えた方が早く、スポーツは壊滅的。
正直アイツとは天と地程の差がある。

なのに、アイツは何を思ったかオレに興味を持ったらしく、学校では何の関わりはないものの他の場所で関わる…というよりは多大な迷惑を被っている。




***



「母さーん、ただいま」
おかえりなさい、という母の声を聞きながら玄関をくぐる。そしてオレは肩にかけている重たい鞄を自室に置きに行ったのだが…。

「よぉ、遅かったな」

自室の扉を開けると悪魔がソファーで寛いでいた。

「おまっ!?人の家に勝手に上がるなよ!」
オレが吠えるとアイツは怠そうに体を起こして、出口を指でさした。
「…なんだよ…」
イヤな予感がした。
アイツは今日一番の良い笑顔で「ハーゲンダッツ買ってこい」と宣った。

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