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□こちら、美化委員会です
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こちら、美化委員会です。
皆大好きお掃除の時間がやってまいりました。
皆様覚悟は宜しいでしょうか。
モップに雑巾、箒にチリトリ、催涙ガスに警棒と、こちらの準備は既に万端でございます。

逃げないでくださいませ。

お掃除の時間はまだ、始まったばかりでございます。

繰り返します。




――こちら、美化委員会です。











七岳学園、という学園は全寮制男子校である。
辺りは海と山に囲まれており、脱出不可能の監獄のようだ。とはいえ、学力は全国トップスリーに入るほど良く、入りたがる学生は貧富を問わず山ほどいる。

だが七岳学園に通っている生徒の九割は俗にいう「お金持ち」とやらが多い。
何故か。簡単な話だ。

裏口入学である。

この七岳学園は山ほどの金さえ積めばどんな馬鹿でも入れる。そう山ほど金さえ積めば、だ。
必然的に七岳学園にはお坊っちゃまが多くなるのは仕方のない話と言えよう。

故に、親の財力がそのまま子の学園内での立場として扱われ、立場の高い家柄の子はどんな問題を起こそうと、よっぽどのことでない限り揉み消された。

所謂、無法地帯である。



学園内での高い立場とは、簡単に言えば役職もちのことだ。
代表的なもので言えば、生徒会や風紀委員会などである。

無法地帯、裁くもののいない環境で権力を手にした彼らは瞬く間に腐敗していった。
七岳学園は腐ったみかん箱だ。
本来であれば腐ったみかんは他にうつる前に摘出するのだが、摘出するはずの風紀委員会が既に駄目になっていた。
どうしようもなかったのだ。
そう、今までは。









体育館倉庫の裏。
誰も滅多に来ないその場所に、数人の男達がいた。
より詳しく言うならば、大柄な生徒数名が小柄な生徒を体育館倉庫裏に引きずりこもうとしていた、だ。
「っ…!誰か…!」
小柄な生徒は既に殴られており、口の端から血が流れ落ちていた。これがどういう現場がわかる人にはすぐわかるだろう。ここは男子校なのだ。
「誰もこねぇーよ」
ギャハハハと嘲笑うかのような笑い声を上げる大柄な生徒達数名。
その後ろにメガホンを持った、場に似つかわしくない和やかな笑みを浮かべる生徒が一人。
小柄な生徒は立ち位置故にそれに真っ先に気がついた。
目を見開く小柄な生徒に違和感を覚える大柄な生徒達。

「――こちら、美化委員会です」

大柄な生徒達が振り返ったと同時に、彼らの顔に催涙ガスが放たれた。

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