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高校三年生と言えばアレがある。
中学生の時も散々苦労させられ、時には血ヘドを吐きそうになった…『受験』がまたしてもオレを追いたてる。
担任の憐れみの籠った視線が痛い。

オレは隣で恐ろしいジンクスを気にすることなく、くるくるペン回しをしている秋に視線を向ける。

「なあ、お前はもう決まってんの?」
何が?とでも言いたげな顔をするので進路だよ、進路。と言うとあぁーと思い出したように言った。

「決まってねーよ、…まぁ、日本の大学に行きてーとは思ってんだけどさ」
そりゃ日本の大学に行くに決まってるじゃん、バカだなー、と冗談めかして笑うと「お前だけには言われたくねーよ」と怒られた。



***


「お前、まだ決まんねぇの?」

アイツは結局あのまま決まらなかったらしく、オレと仲良く二人で担任に残されていた。
オレはともかく、アイツが残されるとは予想外である。
アイツが望めばどんな難関大学もちょちょいのちょいだ。

…頭が悪すぎてどこも選べないオレと違ってさ。

うちは金がないから私立は選べないのだ。
受験に落ちたら働くしかないし、仕方ないけど…、もっと勉強しとけば良かったなんて今更後悔する。

「ん、貸せ」
アイツは無造作にオレの手の中にあった白紙の紙を奪いとった。
さらさらと何かを書き込むと俺の目前につきだした。
そこに書かれていたのは…。
「…こ、これって!こんなむずい所オレがいけるわけないだろ!」
用紙に書かれていたのは、オレの二十以上偏差値が高い、難関大学だった。

「そりゃあ、お前ならいけるだろーけどさ…。」
「いけるさ」
なんてってこの俺が直々に見てやってんだからな。
アイツはそう、自信満々に言い切った。


余裕だよ、余裕って言うのには同意しかねるけどな!

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