弱虫short
□レッドシンドローム
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ふっ、と視界をかすめた赤につられて、今泉は視線を動かす。ポニーテールの女子生徒のシュシュ。はぁ、と小さくため息をついて、今泉は視線を逸らした。
「…俺、そろそろ病気かな…。」
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無意識に、赤色を探している。
それに気がついたのは、ほんの1、2ヶ月ほど前。
何の気なしに追いかける視線の先には、必ず赤い何かがあった。赤いマフラーや、赤い髪留め、赤いペンケース、その他諸々。見つけて追いかける度に、ほんの少しだけ、鼓動が速くなる。
そして、それが一番顕著に現れる"赤"は…
「よーっす、入るでースカシおるかー?」
ガラリと教室の扉を勢いよく開けて、特に遠慮することもなく入ってきた、奴。
赤い髪、赤い瞳、耳につく関西弁と大きな声。
どくり、と心臓が跳ねた。
声のする方に視線を向ける。
あぁ。
目の冴えるような、きれいな赤だ。
「なんだ、鳴子。」
「あっ、居った!居るなら返事せぇやスカシ泉!」
「悪い、お前が小さくて見えてなかった。」
「なんやてぇ!?」
「静かにしろよ教室だぞ
。で、用件はなんだ?」
「次から次へと減らず口をお前は…!…まぁ、ええわ。さっき、グラサン主将に会うてな、今日の練習メニューやけど…ー」
目の前の赤に、鼓動はまだ速いままだ。
俺は本格的に、
落ちてしまったかもしれない。
end
今泉くんはどうしたらスカシ泉くんになるのだろうか。←