ノラガミ 長編

□第二話 勾玉の行方
1ページ/1ページ




「三種の神器…?!」


ひよりが柚器の言葉に目を丸くした。
当然と言えば当然のことである。


「三種の神器ってあの…」


「正確には三種の宝物ですがね。八咫鏡・八尺瓊勾玉・草薙剣のことです。

これらは非常に強い霊力を持つものであるが為,人間ではなく神が保管しているのです。だから現世では三種の宝物の二つが行方不明なのです。唯一現存しているとされる勾玉も,あれは偽物です。」



すかさず補足をしてくれた少女に小さくありがとうございますとひよりは答えた。
それに軽く会釈をして柚器は説明を続ける。




「公…源頼朝公はこの内の一つ, 八尺瓊勾玉の管理を任されていたのですが先日…」



「海の上を馬で散歩してたらいきなり出てきたあやかしと交戦してたら何か海に落としちゃったみたいで…てへ。」




「……お,お前何しちゃってんの?!」




てへ,とかなんとかおどける頼朝に夜トはあり得ないと指差し絶叫した。




「そ,そんなに大変なことなの?夜ト。」



やけに仰々しい夜トの様子にひよりが苦笑すると,当然だ!と凄い剣幕で返されひよりは言葉に詰まってしまった。



「もう一度言うがな。三種の宝物は強い霊力を持つ物体なんだぞ?!それがあやかしの手にでも渡ってみろ…大時化で済むか!人間界に霊災が起きるぞ!!」



「…。」




夜トの話を聞いて,そんな大変な話なのかとようやく理解してひよりは表情を険しくさせた。
事は多くの人間に関わる問題である。




「幸い未だあやかしの手には渡っていないようで,大きな時化などは目撃されていません。その海岸に私共の神器を二名程監視役として置いてあります。」



「勾玉を紛失したのは。」



夜トが凛とした表情と口調で言い放った。何時ものだらしない夜トとは違う,真剣な目だ。



「昨日です。私は速やかに上に報告すべきだと申し上げたのですが公が…」


「だって。説教くらうじゃん!!そんなのやだ!!」


「説教どころの話じゃねぇぇえ!!」




「ねえひより。なんかあの人夜トに似て…」


「…うん…。」


雪音の言葉に何も言えないひよりであった。





.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ