book

□はじめまして
1ページ/2ページ


色んな店に灯る明かり。
ビルのネオンサイン。
ここに越してきてからも思ったけれど、東京という街は自分には不似合いな派手な街だと思う。
中学の時に越してきたが、未だに馴れた気がしない。
お気に入りの屋台で、おじさんに挨拶して焼き鳥を1パックもらう。
いつもはここで家に直行だが、今日は寄る所がある。
目的というか少し気になったから、寄ってみるだけだ。
一度は足を運ばせたことがある、ファーストフード店だ。自動ドアをくぐって、カウンターで期間限定の桜風味シェイクを頼む。
ぐるり、と店内を見回した。
席は満席。だけど相席する相手が見つかったので問題ない。
シェイクを受け取って、窓際の席まで。
「相席よろしいですか?」
「・・・あぁ、どうぞ。」
そう、静かに了承してくれた男の子。
真っ赤な髪に、男の子と言うにはとても大きな体。顔は世間からしたらイケメンという部類に入るだろう。
彼のトレーはハンバーガーが山程乗っていた。
「火神 大我くん。」
「あ?」
突然呼ばれた自分の名に怪訝そうにこちらを向く。
その顔ににっこり笑った。
「はじめまして。志田 総星と言います。」
「は?なんだよ。俺に用か?」
食事の時間が邪魔されてイライラしてるみたいだ。それが面白くってテーブルに肘をついて彼の顔を見つめる。
「気になったからついてきたの。ああ、君に一目惚れとかそういうのじゃないから。」
シェイクを一口すする。
あ、美味しいコレ。
と。彼が益々、眉間にシワを寄せた。
「・・・彼はどうだった?」
「は?」
「彼としたでしょう。バスケ。」
バスケ。という単語が出てから、彼は目を見開く。
「お前、見てたのか。」
「通りすがりにね。」
彼と対峙していた水色のあの子。
「どう、って弱ぇよ。アイツ。意味深なこと言ってたけどな。」
「へぇ?どんなこと?」
「“僕は影だ”とか言ってたな。」
「ふぅん。」
彼の赤い目を見つめる。
彼も私を見つめている。
「初対面の人にそこまで話してくれるとは思わなかった。」
「は?お前が聞いたんだろ。」
不思議そうに首を傾ける彼がおかしくて笑う。シェイクを掴んで席を立った。
「私、君と同じクラスなんだ。これからよろしくね火神くん。」


ああ、
なんて素敵な出逢いでしょうか。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ