book2

□妹
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桜が散っている。
大きな草原に大きな桜の木がある。
目を凝らすと、白いフワフワした物体が木の近くに佇んでいる。

女の子だ。
白いワンピースを着た女の子。
木の幹に座り、本を読んでいる。
なんの夢だ。と目をこする。
すると、女の子が一瞬にして目の前に立っていた。
びっくりして声を上げそうになった。でも、
声が、出なかった。
女の子は人差し指を口元に持っていくと微笑む。


どこかで見たことないか?
長い髪は水色。飴玉のような水色の瞳。
「くろ、」
「火神 大我さん。」
女の子が口を開く。
女の子は寂しげに笑う。
「兄を、テツヤを、」


お願いしますね。







「黒子って、妹居たっけ?」
部活の帰り。マジバで、突然切り出した話。
俺にとってはなんともない夢の話だった。
が、黒子は目を見開きシェイクを持っている手が震えていた。
「何故、火神君が、」
知ってるんですか。と消えそうな声で言った。
「夢に、出てきた。えと、兄をよろしくお願いしますって。」
黒子は両手で顔を覆う。
そしてすぐに俺を見た。
その目はかすかに潤んでいる様な気がする。その目はやはり女の子によく似ていた。
「火神君、」
まるで縋る様に言う相棒に、違和感を覚える。
「なんか、あったのか?大丈夫か?」
顔が真っ青だった。
黒子は何かを決断したように、口を開く。
「僕の双子の妹の梢は、中二の夏から行方がわからないんです。」
「は?」
じゃあ何で俺の夢に出てくんの。ていうか会ったことないのに。
背筋が凍る。寒気がする。
「火神君、お願いがあります。」
黒子は泣きそうな、弱々しい声で言った。
「僕と一緒に妹を探してください・・・。」
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