book3

□世界の終わり
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ここはどこ。
確か、学校を出て歩いてたはずなのに。
目の前には木造の校舎。年期が入っていて風が吹く度に唸っている気がする。
持っている携帯を開く。午後5時30分。止まっている。圏外だから通話もメールもできやしない。
とりあえずここから出ようと校門を探す。あった。そこへ駆けていくが、気付いたら元居た場所に居た。
何度も校門を目指すが無理だ。
なんだこの状況は。
携帯片手に唸っていると、
「あの、」
後ろから声をかけられた。
振り返ると、水色の髪をした男の子が見つめていた。
「・・・どうも。」
「あの、どうしてここに?」
「気付いたらここに・・・、」
彼は綺麗な瞳を伏せて考え込むように腕を組んだ。
「その制服は、海常ですか。」
「はぁ。まぁ。」
彼はあたしの目を見て言った。
「ついて来てください。」
彼は校舎の方へ言ってしまった。
ここから出られないし、頼れる人間かもしれない。と追いかけることにした。
彼は古びた体育館のドアを開けた。鉄が擦れる嫌な音がした。
「黒子!おかえ、り・・・、」
何個もの瞳があたしを捉えて身構える。人殺すんじゃないかってくらいの目力だ。
水色の彼が片手を上げる。
「僕達と同じ境遇の人です。」
水色の彼がそう言うと、体育館に居る人達は溜息をついて座った。
水色の彼に扉を閉めて、と言われたので重い扉を閉める。
なんだか皆、身長が高いし顔もイケメン揃いだ。
「海常の子っスか!?」
そう駆け寄ってきたのは金髪の、ああ、知ってるわコイツ。モデルのキセリョ。バスケ部だったかな。
「先輩たち!!海常の子っスよ!!」
青いジャージ軍団が押し寄せてきた。わかったこいつ等バスケ部だ。
水色の子があたしを促す。
「こちらへ来てください。あなたのことを教えて下さい。」
平均身長がえらいことになっている輪の中に行くのか。威圧感たっぷりだな。
のろのろと歩いてその輪に行く。
と。赤い髪と両眼の色が違う男の子が口を開いた。
「自己紹介をしてくれるかい。」
綺麗に笑っているが目が笑っていない。
「・・・海常高校一年、織部 千鶴。」
赤い子は目を細めて私を観察するみたいに見た。ほかの人もだ。まったく嫌な気分だ。
「君も巻き込まれたようだね。」
「あの、何のことですか。」
赤い子は私を座るように目で訴えた。待て待てどこに座れと。
内心焦っていた私に桃色の髪の女の子が笑顔で隣を開けてくれた。ありがたい。
というかカラフルな頭が多いな。
「君はどうやってここに?」
「気付いたらここに居ました。」
「本当に?」
「嘘言ってどうすんのよ。」
思わずイライラした口調になってしまった。赤い子は静かに笑う。
「君、何か特別な特技を持っていないか?」
「は?」
「ここに居る人達は皆バスケ部なんだ。でも海常バスケ部の人は君を知らない。君はバスケ部じゃないだろう?」
優しい口調なのに威圧的だ。
目はあたしを探るように見ている。周りの彼らも同じだろう。
「特技は料理。家事全般。特別なものは何一つ持っていません。」
正真正銘の凡人だ。
だんだん頭に血が上ってきてイライラしてきた。
赤い子は笑みを深めるだけ。
「では、今君に起きていることを話そうか。ああ、あと僕は赤司征十郎という。」
よろしく。と微笑んだので軽く会釈しといた。
「ここに居る全員は君と同じように気付いたらここに居たんだ。そしてここはとても危険な場所でもある。日が暮れた時、あるゲームが、開始される。」
「ゲーム?」
「そう。化物を倒すゲームだ。」
は?
と思わず声を上げてしまった。
「信じられないのはわかる。だが事実だ。これは夢じゃない。怪我をすれば痛い。戦わなければー、」
殺される。
淡々と告げられた言葉に背筋が凍る。
「実際のところ見てみなければわからない。説明はここまでだ。織部は海常の人と行動してくれ。以上だ。」
お開き、ということなのだろうか。
集まっていた人が散り散りになって行く。
「織部さん。」
は、と見れば黄瀬 が居た。
「なに。」
「これからよろしく!あ、自己紹介も兼ねて、ここにいる人の名前教えるっスね!」
無駄に明るい黄瀬にペラペラと人の名前を教えられた。
意外に一人一人キャラが濃いから覚えられた気がする。
黄瀬は相変わらずペラペラしゃべっているので適当に聴いといた。
と。



ビーッ



突然の電子音に皆が顔を上げる。すると、がしゃん、ごとん、などと音を立てて体育館の床に何かが落ちてきた。
近くに寄ってみると、人数分はない銃や刀があった。ショットガンまである。
するとなに食わぬ顔で皆がそれを手にする。
「何してんの。」
「これから来るものに対抗します。」
水色の子、確か黒子だ。
彼が淡々と告げる。
「カントクと桃井、織部さんは武器持ってる奴から離れないように。」
日向さんとかいう誠凛のキャプテンが言う。
相田さんと桃井さんは頷いた。
待て待て待て。
「待って、ちょ、」
「いいか。なにがあっても離れんなよ。」
笠松さんに言われて余計混乱した。
あたしは今、海常の人達に囲まれている。
理解が出来ないまま右往左往していると、思い切り体育館の扉が開いた。
思わず息を飲んだ。
この状況。信じられるか。
だって扉のところにはゾンビの様な奴らが居るんだぞ。
皮膚は焼けただれている様な、腐っている様な目はギョロギョロと動いているわ、なんなんだ。
「またこいつ等か。」
乾いた声で苦笑するのは秀徳の高尾。
また、とか馴れてるみたいに言うけど皆腰が引けているし汗をかいている。
と。気持ち悪いゾンビがはしってきた。
「撃て!!!」
まずは、桐皇の青峰と今吉さんが拳銃で打つ。
打った球はゾンビに命中して、そいつは絶叫する。
何が起こっている?
これが赤司の言っていたゲーム?
こんな、
こんな、元を正せば人の様な化物を殺すっていうのか。
ガチガチと体が震える。
「火神君!!」
「おう!」
さすがバスケ部といったところか。チームワークは抜群だった。
武器を持たない人は相田さん、桃井さん、あたしを守るようにして立っている。
「今日、こいつら多くない!?」
「怯むな!撃て!!」
バンバン破裂音が響く。肉が裂ける音、肉が散る音。
目をつむる。耳を塞ぐ。嗅覚を呪いたくなるような異臭。
なんだこれ。やだ。帰りたい。
「きゃああああああっ!!!」
「カントク、桃井、織部!!」
ふと、振り返るといつの間に回り込んでいたゾンビがこちらへ向かってくるではないか。銃を打たないのはあたしたちに当たるからだろう。
「くそっ!」
目の前に大きな背が現れた。
確か、この人は、
「土田君・・・っ!!!」
相田さんが涙が混じった声で言った。
ダメだ。この人を、土田さんを死なせてはダメだ。




「おるぁあああっ!!」




気付いたら喉が潰れるほどの大きな声を出してゾンビに回し蹴りをお見舞いしていた。
何してるんだ自分。ていうか蹴った時、ぐちゃっていった。気持ち悪い。
「早く撃って!!!」
あたしの声に日向さんが転がったゾンビを撃ち抜く。
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