book3

□キセキ
1ページ/3ページ


戻ってきたら黄瀬が痛いくらいに抱き着いて来た。
血が出た爪先は相田さんが手当てしてくれた。ごめんなさい、と言ったら頭を撫でてくれた。
涙で腫れた目は桃井さんが濡れたハンカチで冷やしてくれた。
そこへ、
「織部。」
声の主は言わずともわかる。赤司だ。
下を向いて目を見ない。
「僕の言葉が足りなかったな。」
「・・・は?」
「君が化物を連れてきてしまったというのなら、君が一番危ない。そう伝えるべきだった。けれど、僕も焦っていてね。大事な仲間を傷付けたくはないし、つい君を悪者にするような言い方をしてしまった。すまない。」
赤司の顔は、今まで見たことないくらい優しかった。
「・・・あたしも、あの、ごめんなさい。」
「いや、かまかけたのは僕だ。腹が立っているなら殴っても構わないよ。」
そんな笑顔で言われても殴れないわ。
相田さんが溜息を吐いて、桃井さんはニコニコと笑っている。
「君には不安な思いをさせたね。でも僕らも自分の事でいっぱいいっぱいなんだ。わかって欲しい。」
それはわかっている。
小さく首を縦に振った。
「ありがとう。さぁ、もうすぐ日が沈む。戦闘態勢に入ろうか。」
赤司でも人間らしい顔するんだな。と思った。
「??」
はた、と思う。
「あの、昨日殺った死体は、」
「ああ。あれ。不思議と夜が明けると砂になっちゃうの。」
「残ってたらこんなところで寝ないよ。」
ケラケラ笑う相田さんと桃井さん。
「また、汚れちゃうけどね。」
不意に悲しげに目を伏せた。
ビーッと電子音が鳴る。
様々な武器が落ちる。
その中に鉄パイプを見つけて、思わず手に取る。
全員が目を丸くした。
それに、にやりと笑う。
「これでも町一番の喧嘩番長だったんだから。」
そう言って、いつも前線に立っている桐皇組の近くへ行く。
「おい、大丈夫か。」
若松さんが本当に心配そうなのが嬉しかった。まぁ本当だかわからないけども。
「大丈夫です。」
次に青峰を見た。
「間違っても撃たないでね。」
「はっ、誰に言ってんだ、てめぇ。」
上から目線だなコイツ。
なんだか一気に吹っ切れた。
もう誰を信じる信じないとかやめよう。
今、あたしにできることを精一杯やろう。
体育館の扉が開く。



さあ、久々のデスマッチ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ