book2

□妹
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僕には一卵双生児の妹が居ます。
名前は黒子 梢といいます。趣味は僕と同じ読書でしたね。夏目漱石の本をよく読んでいました。
兄の僕が言うのもなんですが、とても綺麗な子でした。性格には少し癖がありましたが、とてもいい子でした。
人見知りの性格から本当に仲のいい人にしか懐きませんでしたね。キセキの世代の皆には懐いていました。
浮いた話もない、ごく普通の女子中学生でした。


でも、中二の夏のある日、
『明日、黄瀬君と出掛けてきます。』
『黄瀬君と?珍しいですね。』
『しつこく出掛けようと言ってくるので、古書店回りに付き合うこととお昼を奢ること、という条件を出したんです。そしたら嫌な顔一つせず了承してくれたので。』
黄瀬君は梢のことが恋愛的な意味で好きでした。
梢も、否定はしていましたが黄瀬君を気にしているようでした。
女の子は選び放題の黄瀬君でしたが、梢は本気みたいで一度、『梢っちください!』と言われたこともありました。
そんな二人は見ていて面白かったし、僕は応援をしていました。
『デートですね。』
『デートじゃないです。』
この日の会話が、最後になるなんて思いませんでした。
次の日の午前11時頃、梢は出掛けていきました。お気に入りの白いワンピースと、桃井さんからのプレゼントのピンクのリボンがついたツバの広い帽子をかぶって。
『いってきます。』
『気をつけて。いってらっしゃい。』
僕が梢を見たのはこれが最後です。
梢が出掛けて一時間くらい経った頃でしょうか。
黄瀬君から電話がかかってきたんです。
〈黒子っち!梢っち居る?〉
『一時間くらい前に出ましたよ?来ていませんか?』
〈俺、11時にはここに居たんスよ。あ、もしかしてすっぽかされた!?〉
『梢は約束は守る子です。黄瀬君でも怒りますよ。』
〈わ、わかってるッス!でも、心配じゃないスか。〉
黄瀬君は焦っていました。
僕も心配になってきたので、黄瀬君と二人で梢を探しました。
携帯は何度電話をしても繋がりませんでした。
ほかの人にも声をかけて、総動員で探しました。
夕闇が迫る頃、僕の父と母は警察に連絡しました。
僕もキセキの世代の皆も血眼になって探しました。
けど、その日は結局見つからずに終わってしまいました。
明日、ひょっこり帰って来て欲しいと祈るばかりでした。


でも、

でも・・・、
梢は帰って来ませんでした。
ビラを配り、毎日手当たり次第探しても、手がかり一つなくて。
とうとう僕が中学三年を終える頃には、警察の捜査本部も動かなくなってしまいました。
今もビラを配ったりしていますが、全く駄目なんです。




「それで、火神君。」
「お、おう。」
「夢の中の梢の着ているワンピースの丈はどのくらいでしたか?」
「ん、あぁ。膝が隠れるくらいで、袖はノースリーブだった。」
「事件当日の服装と同じです。」
僕は口角を上げる。
何故、僕の夢には出てこないんですか。火神君に僕のこと頼んで、どうするんですか。
どこにいるんですか。
「黒子。」
「・・・は、い、」
「諦めんな。」
火神君の目を見つめる。
「黒子が諦めなければ、絶対見つかる。妹も、きっと見つけて欲しいはずだ。」
だから、そんな顔すんな。
と笑う火神君。
目尻が熱い。
「誰が、諦めますか。」


バスケも梢を探すのも、全身全霊で、
頑張ります。
だからもう少し待っててくださいね。
梢。
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