book2

□薄桜の夢
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青峰君の部屋に駆け込むのはいつものこと。
朝、起こしに行ったりとか。
でも今日はそういうんじゃない。おばさんに挨拶して、階段を駆け上がり扉を開ける。
ベッドの盛り上がりにダイブした。
「大ちゃん!!大ちゃん!!ねぇ、大ちゃん!!」
「うるっせぇな・・・。今日、日曜だろうが・・・。」
「大ちゃんてば!!!!」
「だから何だよ!!!」
がばり、と起き上がる青峰君を避ける。
「どうしよう・・・!!」
「は?何が、てか何でお前泣きそうなんだよ。」
私はヘナヘナと座り込んで、青峰君を見上げる。
「梢ちゃんに、会った・・・。」
「・・・は?」
青峰君は眉間にシワを寄せてため息を吐く。
「何の冗談だよ。」
「夢で会ったの!!」
「夢かよ。」
「梢ちゃんが、青峰君は元気ですかって、言ってたんだよ!!」
「やめろよ。」
「梢ちゃんが、」
「やめろよ!!!!!」
青峰君の怒鳴り声にハッとする。
青峰君は頭を抱えてベッドに座っていた。馬鹿。私、こんな突拍子もない話、急にしたって、
「大ちゃん。あのね、夢の中で梢ちゃんが、見つけてって言ってたの。」
「・・・・・・。」
「ねぇ、大ちゃん!!」
「見つけるも何も何処を探せばいいんだよ!!!」
聴いたこともないような幼馴染みの声に固まる。
こんな、悲痛な声。出るんだ。なんて頭の隅で思った。
「・・・その話、二度とすんな。」
「で、でも、何か意味が、」
「笑わせんなよ。ただの夢だろ。」
「だ、大ちゃん!!」
「もう死んでるかもしれねぇ人間なんだぞ!!!!」
「ーーーーっ!!!!」







ばちん、






手が痛かった。
青峰君のほっぺたも痛そうだった。我慢していた涙が溢れる。
「何でそんなこと言うの!!!そうやって何でもかんでも目背けて、諦めて、大ちゃんは何処に行こうとしてるのよ!!」
青峰君の顔が見れなくて、床を見て叫ぶ。
「梢ちゃん、どこかで泣いてるかもしれないんだよ!!!何で終わりにしようとしちゃうのよ!!!そんなこと言うなら、私一人で探すからっ!!!!」
最後に思いっ切り、馬鹿!と言い捨てて声をかけてきたおばさんにお辞儀して玄関を出た。
「バカバカバカ!!!」
言いながら自分の部屋に駆け込み、ベッドに飛び込んだ。
大声上げて泣いて、梢ちゃんの名前を何度も呼んだ。
頭の隅で少し冷静に思う。
徹底的に調べて、絶対に見つける。大ちゃんなんかに頼らない。梢ちゃんが、死んでるなんて考えたくもない。ありえない。
待っててね。
梢ちゃん。
私がテツ君のところに帰してあげる。
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