隠し物語

□山本と獄寺
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まず最初に出発するのは山本と獄寺のチームだ。

「はは!なんかワクワクするのな!」

「いいから行くぞ、野球馬鹿」

怖がる様子もなく、二人はリボーンから手渡された懐中電灯を頼りに山の中に入って行った。
綱吉は小さくなる二人の背中を見て呟く。

「羨ましいなぁ」

「何が?」

「うを!?ひ、雲雀さん!!」

綱吉の呟きに雲雀が返すと、綱吉は大袈裟にも驚きを示した。
雲雀は手で耳を塞ぐと不機嫌そうに言う。

「うるさい」

「ご、ごめんなさい…」

じろり、と睨まれ綱吉は震えながら謝った。
それに雲雀は気にも止めず、先程の言葉を繰り返し訊いた。

「何が羨ましいわけ?」

「あ、え…と」

「答えなよ」

「いや。二人とも、怖がって無さそうで…」

暗闇を恐れずずんずん歩く二人。
ヘタレを自覚している綱吉にとっては羨ましいのだ。
雲雀は綱吉を横目で見るとポツリと、呟く。

「怖がっていた方が、いいよ」

「へ?」

「恐怖は人の生存本能だ。命の危機に晒さないためについてる」

決して綱吉を見ようとはせず、かと言って綱吉に語りかけている訳でもない。
独白に近い言葉。
それでも雲雀の言葉はすとん、と綱吉の心に入り込んでいった。

「ありがとう、ございます」

「?なんで礼を言われなくちゃいけないの?」

「いえ。何となく…」

不思議そうに尋ねる雲雀に、苦笑いを浮かべつつ綱吉は返した。
そしてふと思う。

「雲雀さんにも怖いもの、あるんですか?」

そういえば骸は幽霊が怖いとか言っていた。
雲雀は瞬きを数回すると、低く答える。

「ないよ」

「あ、そうなんですか」

さすが、と言うべきなのだろうか。
雲雀の恐怖についての事を聞いた後では今一、凄いとは思えない。

「だから、困ってるんだよ」

「へ?今なんて?」

「何でもない」

何か言ったらしいがそれは生憎綱吉には聞こえなかった。
もう一度聞こうかと口を開いたとき、後ろから「極っ限ー!!」という叫び声が聞こえた。
待つのを飽きた笹川がトレーニングと称して適当な気を殴り倒そうとしている。

「ちょっと、止めてくれる?」

「なぜ止める!!」

「当たり前でしょ。ここも一応私有地なんだから」

「しゆうち?何だそれは!!」

私有地の意味がわからない笹川だった。
それに雲雀はため息をつく。

「もういいよ」

「そうか。なら俺は続きを」

「だから駄目だっていってるでしょ。咬み殺すよ」

ジャキ、とトンファーを構える雲雀に、笹川は嬉しそうにボクシングの構えをした。
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