隠し物語

□並盛山
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歌を紡ぐように怪談を語る雲雀。
それはとても愉しそうで。
少し、ぞっとした。

「帰ってきた者は繰り返し呟いていたそうなんだ。白い手が、白い手が…って」

そして山本を見て、クスリと笑った。

「‘白い手が祠から襲ってきた’んだって」

綱吉は思わず山本を見る。
いつもどうりの笑顔。
けれどどこかひきつっているように見えたのは気のせいか。

「そのあと、その人たちは亡くなったそうだよ。―――これが並盛山の怪談。でしょ?笹川了平」

「うむ!」

笹川は深く頷いた。

「まさにそのとうりだ!!今思い出したぞ!!」

と、叫ぶように言い笑った。
獄寺がうるさそうに耳をふさいだ。

「うるせぇぞ!!芝生馬鹿!!」

「何だと、タコ頭」

「まぁまぁ」

うるさいと怒鳴る獄寺に心外だと言うかのような笹川。
そんな二人を山本は宥めながら笑っていた。
その笑顔を見て、綱吉はほっとした。
先ほどのどこかひきつった笑みを浮かべていた山本だが、今はそんなことはない。

「て、獄寺君ダイナマイトはダメー!!」

笹川に苛ついたのかダイナマイトを取り出した獄寺に、ぎょっとした綱吉は慌てて獄寺を止めたのだった。

「骸様……」

クロームが心配そうに骸に歩み寄った。
木にもたれかかりながら考え事をしていた骸は、クロームが近づいて来たことに気づき、ほほ笑んだ。

「どうかしましたか?クローム」

「あの…」

言いにくそうにクロームは口を開いた。

「大丈夫ですか?」

思ってもみない質問に骸は咄嗟に返答することができず、瞬きを数回した。

「顔色悪いから…」

「ああ」

骸は得心がいったのかクロームの頭を撫でる。

「クフフ。大丈夫ですよ。クロームこそ大丈夫ですか?もう遅いですし帰ったほうが…」

「ここに、います」

骸の言葉を遮りクロームは首を横に振った。
そして淡くほほ笑む。

「みんなといると楽しいから」

「そうですか」

なら仕方ない。
まぁ、一般人ならクローム相手に手も足も出ないだろう。
たとえ面倒事に巻き込まれても綱吉達を盾にすればいいこと。
何気に綱吉達に対し酷い考えをしているのだが、骸は気にしない。
そもそもあの一行は厄介事に巻き込まれやすいのだ。
ヴァリアーしかり、未来の出来事しかり、最近ではシモンファミリーといざこざがあった。
自分も厄介事を起こしたこともあることを棚にあげ、骸はそう心の中で綱吉達について少し愚痴を溢した。

「なにかあったらすぐに呼びなさい」

骸の言葉にクロームはコクリと頷いた。
 
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