隠し物語

□並盛山
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「十代目ー!」

夏の終りは風が吹けば肌寒い。
そんなことを思いながらいると、獄寺が手を振っているのが見えた。
山本も遠目から見て笑っている。

「獄寺君、山本!」

綱吉は二人に駆け寄っていく。
二人は赤と青の石を持っていた。

「怖くなかった?」

「大丈夫っすよ!」

「そうそう、祠以外は別に怖くなかったぜ!!」

「……へ?」

にこやかに山本が言う。
さらりと言ったそれに、一瞬流しそうになったが今の山本の言葉は。

「山本…、もう一回言って」

「祠以外は別に怖くなかったぜ」

「……祠は?」

「怖かったのな〜」

ほけほけと言う山本には微塵も恐怖が伝わってこなかった。
それでも、綱吉を怯えさすには十分だ。

「なんか、祠から白い手が出てきてさー」

「だからそんなもん無かったつっの」

山本が見たと言う白い手。
それは獄寺には見えなくて。
錯覚だと思ったのだ。
それでも、あの時の恐怖は忘れられない。

「まぁ、気のせいだったのかもな」

「その話」

木にもたれ掛かっていた骸が三人に近づいてきた。
どことなく浮かべる表情は険しい。

「詳しく話して頂けませんか?」

「いいぜ」

山本は骸に、自分が見たものを話した。
その話を聞いている間、やはり骸の表情は険しかった。

「そう言えば」

ついでにと聞いていた笹川が思い出したようにポツリと呟いた。

「並盛山には怪談があるんだったな」

「どんな?」

骸がすかさず訊くと笹川は一つ頷いて、

「極限に忘れた!!」

と、言ったのだった。

「怪談って…たしか、神隠しのことでしょ?」

笹川に呆れつつ雲雀が言った。

「神隠し?」

「そう。並盛山を舞台にした怪談だよ。知らないの?」

腕を組み、綱吉達から離れた場所から雲雀は言った。
何が楽しいのか口元には笑みが浮かんでいる。
そして雲雀は歌うように話し出した。

「昔、並盛山に行方不明者が続出したんだ。子どもから大人まで関係なくね。
理由はわからない。一緒にいた者が一瞬目を放した瞬間いなくなるんだ。いくら捜してもいなくなった者はいない。帰ってくるものも、限りなく少なかった」

淡々と、語り聞かせる雲雀の声は離れているのになぜか響いて聞こえた。

「そのうち人々は神隠し、と言うようになり並盛山には誰も近づかなくなった。
そして、ほとぼりが冷めてきた頃にある事が起きた」

「ある事?」

「そう。言ったでしょ?‘帰ってきたものは限りなく少なかった’って。帰ってきたんだ。神隠しにあった者がね」
 
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