隠し物語

□逃亡
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「どこかに出口は…」

いや、そもそも入り口なんかあったか?
自分は気づいたらそこにいたというのに。

「どうしたら……、ぐぁ!?」

突如、首が絞まり息ができなくなった。
酸素を吐き出してしまい、肺が空になる。
力が入らず、綱吉と雲雀は地面に落下する。
それでも綱吉は子どもになった雲雀だけは助けようと、自分が下敷きになる形にする。
そして首を見れば肌色のゴムのように軟かなものが巻き付いていた。
それが腕だとわかったのは地面に落ちてからだ。
叩き連れられ、息が詰まる。
そのまま意識が朦朧する綱吉を引きずり、自分の元に引き寄せる女性。

パカリ、口が大きく開く。
涎がしたり、地面を濡らしている。
覗く牙。鋭く光り、簡単に貫きそうだ。
痛そうだな、と思った。

「ひば…」

逃げて…。

声にならない声で呆然と綱吉を見ている雲雀に、綱吉は言った。

「ミツボシ……チカラ…」

そして、世界は。


真っ暗に、染まった。


「あああああああああああああ!?」

聞こえる悲鳴は誰のものだったか。
喰われている綱吉にはわかるはずもなかった。



◇◇◇


暗い、寒い。冥(クラ)い。


なんだかこの世界に一人ぼっちになったかのような錯覚に陥る。

「(ここ…どこ…?)」

とにかく寒い。
とにかく暗い。

どうしようもないほどの不安に襲われる。

口を動かせば水泡がブクブクと音をたて、上へ上っていく。
その水泡の向こう側に何かの景色が見えた。

「(何……、あれ…?)」


赤い炎が禍々しく燃えている。
獄寺が灯す炎と同じ色なのに、なぜかおぞましく、恐ろしく感じた。

『儀式…』

儀式、儀式、儀式。
反響する声。

『やだよぅ。やだよぅ…死にたくないよ…』

ひっく、ひっくとしゃっくりを上げ泣く子どもを無理やり祭壇に連れていく大人。
前には仰々しく飾られた巨木に吊るされた縄。
なぜか先端が丸く輪っかになっている。

『村の為だ』

『やだ!やだやだやだやだやだやだやだ!!』

駄々をこねる子ども。
男性達に押さえつけられている女性。
その女性はどこかで見たことがあったような気がする。

『村の為なのだ…、頼むから…』

死んでくれ。

そう、無情に、非情に、残酷に言う。

死んでくれ、死んでください。死んで死んで死んで死んでよ死んじゃえ死んでください。お願いお願いします死ね!死んじゃえ死んでください死んで死んで死んで死死死死死死死死

死ね


「う、わあああああああ!!」

子どもに放つ呪詛に、思わず悲鳴をあげた。
 
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