隠し物語

□脱出
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亀裂が入り、光が零れている。その光に綱吉は迷わず、手を伸ばした。
掴まれる手。低体温のぬくもりを感じながら、綱吉は引っ張り出された、

「やっと出てきましたか」

ぺたん、としりもちをついている綱吉を見下ろしながら、骸は呆れたように言った。そして、息を大きく吐き出す。

「何しりもちついてるの?」

綱吉の後ろから、トン、と軽い音を鳴らしながら降り立つ雲雀が不思議そうに訊いた。それに綱吉は苦笑を漏らした。

「安心したら腰がぬけました」

「軟弱だね」

「そうですね。とてもマフィアのボスには見えない」

「いや、ボスにはならないよ!!」

馬鹿にしたように言う二人に綱吉はそう怒鳴り返した。
雲雀が綱吉に手をさしのべる。綱吉はその手を取って、立ち上がった。

「さて、出ますか」

「どうやって?」

「入ってきた道を渡ればいい」

「………」

確かに雲雀の言うとうり入ってきた道を行けば確実だろう。しかし、綱吉の場合声を頼りに無我夢中で来たため、道がわからないのだ。
綱吉の無言で何となく察した雲雀は冷めた目で綱吉を見た。

「ぅ…」

その冷たい視線に綱吉はたじろいだ、
だって仕方ないじゃないか。必死だったのだから。
助けを求めるように骸を見ればいい笑顔で、拒絶した。
こういう時の骸は輝いてみえると綱吉は思う。

「まぁ、日が射してきましたし、時間がありませんので裏技を使いますか」

見れば空間がどろどろに溶けてきている。溶けた箇所を指差しながら、綱吉は恐る恐る訊いた。

「ちなみに、時間が過ぎたらどうなるの?」

「三人仲良くあの世行きですね。骨どころか衣服すら残りません」

「神隠しだしね」

なんてこったい。
改めて聞くと、今自分は危機的状況にいるのがわかった。
青い顔をしていると、雲雀が容赦なくトンファーで綱吉の頭を殴った。

「鬱陶しい」

「理不尽すぎる!!」

どうやら雲雀の前では怯えることすら許してくれないらしい。

「で、でも…どうやって出るかわからないのに…」

「だから裏技を使うと言ったでしょう。人の話しはきちんと聞きなさい」

「裏技…?」

「ええ。…僕がこの空間に入ってきた方法でここから出るんですよ」

そう言うと骸は迷いなく、槍の切っ先を自分の左腕に突き刺した。血が傷口から溢れでる。

「骸!?」

骸の突然の行動に綱吉は驚愕したように声を上げた。
血が地面に滴る。
ずぅんと空気が重くなる。空間が悲鳴をあげてるかのような、耳障りな音を鳴らす。
 
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