ショート・ストーリー
□ショート・ストーリー
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泣く(赤+黛)
初めて負けた。今まで勝つことが当たり前で、勝つことこそがすべてだった。だから負けたなんて、本当に始めたで。
熱いものがとめどなく流れる。拭っても、拭ってもそれはやむことを知らない。
ひどく、胸が痛んだ。熱くて、苦しくて。どうしようもないほどに、痛かった。
ああ、これが負けたということか。これが、敗北というものか。
自分以外の人間は、たいてい敗北を味わっているのだという。こんな、痛みと苦しみしかないものを味わって、それでもまだ立ち上がるものには本当に尊敬する。
「泣いてんのか? ……って、訊くまでもねーな」
色素の薄い紙に、瞳。その瞳に宿る色がどんなものかはあいにく今の自分にはわからなかった。
「初めての敗北はどうだ?」
「……さい、あく、だよ……」
痛くて、痛くて。ただ、痛くて。
「ふーん」
興味ないというかのように彼は適当に愛筒を打った。自分から訊いてきたくせにと文句を言おうとしたとき、頭にぽすん、と手を置かれた。
「じゃあ、その最悪を今は思いっきり味わえば? どうせ、初めてなんだろ? なら、しっかり味わって、飲み込んで、それを自分のものにしろ」
そう言って、乱暴に慣れない手つきで撫でてくる手はごつごつしていた。
キャラに似合わず先輩風を吹かしている彼が、なんだかおかしくて。
さらに涙がこぼれた。
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黛さん最上級生だもの。災下級生の赤司を慰めてもいいと思うの。キャラじゃないけど!!←
016/5/13