ショート・ストーリー
□ショート・ストーリー
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慰める(赤+黛 ※「泣く」の黛視点)
高校最後のウィンターカップは敗北という形で幕が下りた。正直、ほかの奴らと比べて悔しいとか、あんまり思わなかったのは洛山というチームに対してあまり愛着を持っていなかったからだろう。
そして、今オレの目の前で赤い瞳を持つ二個下の後輩が泣くなど予想もしていなかった。
泣きわめくわけでもなく、ただ涙を流すこいつは胸の部分の布を握りしめ、苦しそうに息をしていた。
ああ、こいつは泣き方すら知らないのか。
勝利以外のことを知らないとは、難儀な奴だと思った。
「泣いてんのか? ……って、訊くまでもねーな」
訊くまでもなく見ればわかるほどにこいつは泣いていた。ぽろぽろと、涙が滴になって小さなビー玉になって落ちていく。透明なビー玉は床に落ちることなく布に吸い込まれて消えていった。
「初めての敗北はどうだ?」
「……さい、あく、だよ……」
「ふーん」
苦しそうに眉を寄せてに息をするこいつはまるで息の仕方を忘れてしまっているかのようだった。ああ、そういえばいつだったか誰かが証のことを勝利は赤司にとっては息するのと同じ、代謝のようなものと打っていた。今のこいつを見る限り、確かにその通り化もなと思う。
初めての敗北。今まで負けたことのないこいつにとってはどう昇華すればいいのかわからないのだろう。
本当に難儀な奴だ。十六年も生きていてそんなことも分からないとは。
「じゃあ、その最悪を今は思いっきり味わえば? どうせ、初めてなんだろ? なら、しっかり味わって、飲み込んで、それを自分のものにしろ」
そういって、深紅色の髪を撫でればさらに透明なビー玉が転がり落ちてきた。
キャラに似合わないことをしているのは知っている。しっているが、まぁ、どうせこいつとはオレが卒業してしまえば疎遠になるような間柄だ。
最後ぐらい、優しくしてやってもいいだろうと思った。
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な、長い……。これはショート・ストーリーではなく短編にすればよかったかもしれない……。
016/5/14