ショート・ストーリー

□ショート・ストーリー
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気づく (赤黛 重ねるの黛視点)

「千尋」

そう、まだ子どもから抜け切れていない声が俺を呼ぶ。高いようで低いような声は不思議と耳に響く。鼓膜から支配する。
そうして落とされた口付け。
俗に恋人同士がやるもののそれはまぁ、俺ら自身恋人同士だからおかしくはないだろう。性別とか抜きにしてだが。
それでも、なぁ、お前は気づいているか?いや、きっと気づいているんだろうな。
俺を求めるその声が、その目が俺を通り抜け別の誰かに向けられていることなんて。
なんて滑稽。可笑しいとしか言えない関係。
そのことに気づいていながらも、この関係を崩したくないと思った。

それでも、いつかそう遠くない未来で終わりを告げるだろうということはとっくに、気づいていたんだ。



015/08/20
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