ショート・ストーリー
□ショート・ストーリー
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祈る(桃井独白)
最初はみんな楽しそうだった。決して仲がいいと胸を張って言えないだろうけれど隣にいることが当たり前で。共に戦うことが楽しくて。信頼して、信頼されて。そんなふうに楽しそうにバスケをしていた彼ら。
ボールに触れることがうれしくてたまらない。相手と対峙するのが楽しい。強くなることが、楽しくて、うれしくてたまらない。そんな感情が見ているこっちにも伝わってきていたほどだ。
ああ、なのにどうしてこうなっちゃったんだろう。
いつの間にかボールに触れてもうれしくなさそうになっていた。相手と対峙してもつまらなそうで。強くなるたびに絶望していっていた。
苦しそうにバスケをする彼ら。
仲がいいとは言えなかったにしても、強い絆で結ばれていた彼らの間にはいつの間にか無遠慮で、凍えてしまいそうなほどに冷たい風が吹いていた。
彼らは、ただバスケが大好きで。バスケをプレイするのが大好きで。
ただ、それだけだったのに。
バスケの神様に愛された彼らはそれゆえにバスケをすることに楽しさを感じられなくなってしまった。
いつか。
いつか、彼らがまた笑いあい、楽しそうにボールを追いかける姿を見ることができるだろうか。もう一度見てみたい。
彼らを愛しているバスケの神様。愛しているならばどうかお願いします。
彼らの無邪気な笑顔をもう一度見せてください。
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帝光のヒロインは桃井ちゃん。
016/5/19