ショート・ストーリー

□ショート・ストーリー
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懐かしむ(黒子独白。本編から数年後設定)



 キュッ、キュッとシューズが床をこする音が聞こえる。大きな音を奏でながら丁寧に手入れされているボールを追いかけている少年たち。誰もが汗をかいて疲れているのが見てわかるのに、誰もがそれを苦に思っていないのも綱割ってくる。
 きっと、楽しいのだろう。ボールを追いかける音が。相手を抜き、ゴールにシュートを決める瞬間が。相手の目を欺き、意表を突くことが。思うままにパスをだし、ゲームメイクすることが。相手のボールを奪う瞬間が。
 きっと、そのどれもが楽しくて仕方ないのだろう。
 かつて自分たちが感じていたようにこの小さな後輩たちも同じようにバスケットボールを愛しているのが分かった。
 帝光中学。そこのバスケ部は中学バスケ最強と謳われ、五人の天才を同時に輩出した中学。
 自分の、始まりでもある場所。
 ここで、あの眩いばかりだった光に出会わなければ炎のごとく荒々しい光にも出会えなかっただろう。
 全然変わらない。変わらないからこそ、それをうれしく思う。
 うれしいことばかりじゃなかった。つらいこともたくさんあった。
 それでもここはやっぱり、自分にとっての始まりの場所なのだ。



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 何かの拍子に母校に行きたくなりますよね



016/5/20
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