隠し物語

□霊症
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ある秋の日の夜。
リボーンの思い付きで肝試しに参加することになった綱吉達。
そこでは予想外なこともあったが、最後は無事に肝試しも終わった。
そして次の日。

「………」

何かが、いる。
珍しく誰にも起こされることなく目が覚めた綱吉の眼前には、頭から血を流した男性の顔が映っていて。
綱吉は静かに瞼を閉じた。
そしてもう一度瞼をあける。
眼前に映っているのは血を流している男性。
綱吉は息をおもいっきり吸い込み、

「ギャアアアアアアアア!?」

おもいっきり、叫んだ。



一階のリビング。
食卓を囲み、和気あいあいと朝食を食べる沢田一家(大半は居候)。
そんな中、綱吉だけは意気消沈としていた。
頬は赤く腫れている。

「いきなり殴ることないだろ、リボーン」

じと、と綱吉は半目で睨むがリボーンはどこに吹く風だ。

「俺の眠りを邪魔したツナが悪い」

奈々の焼いた目玉焼きを美味しそうに食べながら、リボーンは言った。

「だ、だって!目の前で知らないおっさんが血を流しながら目の前にいたら誰だって叫ぶだろ!?」

「そんなやつどこにもいねーぞ」

「やーね。ツナったら。寝ぼけてるの?」

「ママン、おかわり!」

「はいはい」
 
みんな、綱吉の言葉なんて信じていない様子。
ランボはそもそも興味ないようだが。

「本当だって!!ほら、なんかあそこにも子どもいるし……」

「?誰もいないよ、ツナ兄」

綱吉が指差した場所には誰もいない。
フゥ太は首を傾げながら、言った。
ビアンキは憐れみのこもった眼差しを綱吉に送った。

「かわいそうな子」

「やめて、それ傷つく」

妙に気持ちのこもった言葉は短いけれど、綱吉の心にダイレクトに刺さった。

「ほら、ツナ。獄寺君と山本君が来ているわよ」

ピンポーンとインターフォンの音がなり、綱吉は慌てて残りのご飯を掻き込んだ。

「行ってきまーす!」

「いってらしゃい」

慌てて外に出る綱吉にビアンキが一言言った。

「早く起きても起きなくても、結局は慌ただしいのね」



◇◇◇


「ごめん!待った?」

「いえ、先ほど来たばかりですし」

「待ってないから安心しろよ」

外に出れば獄寺と山本が待っていて、申し訳なさそうに謝れば二人は気にしていないと笑った。

「十代目、どうしました?」

視線をあちこちに向ける綱吉に獄寺は訊いた。

「あ、いや…」

「もしかして、ツナも視えるのか?」

これ。と山本は空を指差した。
そこには涙を流している女性が浮かんでいた。
 
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