ショート・ストーリー

□ショート・ストーリー
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重ねる (赤→黒前提の赤黛)

「千尋」

名を呼べばぶっきらぼうに返ってくる声。僕が望めば応えてくれる彼に安心する。
頬に手を添え、決して柔らかくはないそれに口付けを落とす。
これはごっこ遊びだ。恋人ごっこ。
彼はあいつに似ているから。ふとした瞬間のあいつに似ているから。だから、僕は。
なんて滑稽。
あいつと彼を重ねる僕も、それにおそらく気づいていながら応える彼も。
それでも、今の関係を崩すことはしたくはないのだ。



015/08/11
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