ショート・ストーリー

□ショート・ストーリー
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微笑む(黄笠)



 学校も部活もない本当の休日。特に何をするわけでもなく、ただ部屋でゴロゴロとするのは久しぶりで体がそわそわしてしまう。
 ちらりと視線を向ければベッドの上で気持ちよさそうに眠る愛しい人。
 普段は、不機嫌かと思われるほどに(そのほとんどの理由は自分を筆頭に部員たちにあるだろうということは言うまでもないけれど)眉間にしわを作る凛々しい眉は今は穏やかな曲線を描いている。何か夢を見ているのか、時々寝言を言う彼は普段の彼とは真逆だ。ああ、そして、それを見せてもいいと思えるほどに自分は信頼されているのか、とおもう。
 心地よく、時たまに寝言を言う彼。髪を撫でれば見た目通り少しざらついていて手入れも何もしていないのが分かる。

「センパイ」

 試しに呼んでみたが返事がない。完全に寝入っているからだ。
 熟睡しているセンパイの髪を撫でながらオレは思わず微笑んだ。
 ああ、なんて穏やかな日だろうか。

「良い夢を」

 今見ている夢が何かまではわからない。けれど、それが先輩にとっていい夢ならばうれしい。
 笑んだオレに反応するかのように、寝ているセンパイが楽しそうに微笑んだ。



016/5/23
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